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集まってきた者たちの中には

 一息入れる。仰向けに寝転がる俺はゆっくりと流れる雲を眺めていた。

 さっき建て終えた小屋の屋根に登って、草原を流れる風を感じている。


「ゼロ~、そろそろお昼にしようよ~」


 下にいるルシルが俺を呼ぶ。


「ああ、今降りるよ」


 起き上がって、周りを見る。

 牧場を造り始めてから三日が経つ。小屋は俺が工作クラフトで造ったから、材料さえあれば一人でできるし、時間もそうはかからない。

 牧場の柵はかなりできあがっていた。いろいろな獣人たちが協力をしてくれて整備が進んでいるし、ルシルたちが呼びかけてくれたお陰で、羊や狼たちも戻り始めている。


「だいぶ進んだな」


 俺はゆっくりとハシゴを使って降りていく。下では切り株をテーブル代わりにしてルシルがシチューを用意してくれていた。


「教は小屋ができた記念に、なんちゃってミートでゴロゴロ肉団子を作ってみました~」


 ルシルは最近料理をよく作ってくれる。

 昔は壊滅的に食料を無駄にするだけの工作だったのだが、このところはきちんと料理の形になっているどころか、しっかり美味い品を作れるようになっていた。


「これもバイラマの知識と身体があればこそ、なのかなあ」

「なに? なんか言った?」

「いや別に。腹減っていたから嬉しいよ」

「お代わりもあるから、いっぱい食べてよね」

「おう」


 俺がシチューを食べていると、ピカトリスが獣人たちに材木を運ばせながらこちらに近付いてくる。


「あら、お昼だったかしら?」

「ちょうど今食べ始めたところだよ」


 ピカトリスは俺の隣に座り込んで、額の汗をぬぐう。


「ほら、あんたにも恵んでやるから」


 ルシルの口調は悪いものの、ピカトリスと獣人たちにもシチューをよそってくれる。


「あら、ルシルちゃんありがと~。んまぁ、美味しそうねぇ!」


 ピカトリスはシチューを口いっぱいに頬張って、幸せそうに口を動かしていた。


「で、ただ昼飯を食いにきた訳じゃないんだろう、なにかあったか?」

「それなのよ。いくら探しても、そのモココちゃんっていう羊ちゃんがね、思念伝達テレパスにかかってこないのよう」

「モココが?」


 ピカトリスは残念そうにうなずく。


「ゼロ、私も何度か探してみたんだけど、意識が届かなくて」

「ルシルもか。森に逃げ込む前にあれだけ吐血していたりもしたからな、心配だが……」


 俺はシチューを急いで口の中に流し込むと、剣をつかんで歩き出す。


「どこ行くの?」

「ちょっと森にな」

「そんな急がなくても……」

「いや、今日は久しぶりに雨が降りそうだ」

「そうだね、遠くの空が暗くなってきているし」

「だから雨が降る前にと思ってな。グレフル! いるかグレフル!!」


 俺は周りの動物たちに声をかける。

 グレフルは、グレートウルフで人語が話せるから重宝していた。


「ゼロさん、どうしました?」

「おお、いたかグレフル。お前の鼻を貸してくれ」

「は、はい、それは構わないんですけど、どうしたんです?」


 俺は簡単な身支度を調えると、歩きながらグレフルに伝える。


「これから森に向かう。モココが付けた縄張りの匂い、あの匂いを追って欲しい」

「縄張りとは別の場所の、ですね」

「その通りだ」


 グレフルは喜んで鼻を鳴らす。


「任せてくださいよ! オレら狼の鼻を使って、モココさんにたどり着いてみせますって!」


 グレフルの周りには目つきの鋭い狼たちが集まっていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ、私もいくから!」


 ルシルも駆けつけて俺の隣を歩く。


「わるいな、助かる」

「任せてよ」


 俺たちは群れをなして森へと向かった。

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