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命の重たさと抱えられる範囲

 俺たちは俺の小屋に集まって囲炉裏を囲んでいる。

 命を守る事は大切だ。モココたちとのやりとりでいろいろと学んだ事がある。


「森を守る、森の生き物を守るという事は大変だな……」

「ここの森は広いんでやす。目の届く範囲はどうにかなっても、それもほんの一部なんでやすよ」

「なんちゃってミートで済む動物たちも限度があるだろうし……」


 そこが悩みどころだ。

 どこまでか、という。範囲も、対象も。


「なあモココ、魚とか鳥はどうなんだ?」

「うーん、生きているといったら、生きているんでやすが……」

「木や草も生きているよな。種とか木の実なんて卵みたいな物じゃないか。次の世代を生むための」

「確かにそこはあっしもよく考える事でやんすが」


 作業の後の夕方。まだ日は落ちないが、囲炉裏には火を入れている。

 モココとグレフルは火に慣れたのだろう。怯える事はなくなっていた。

 炎の灯りに照らされて、俺たちの顔に影が揺れる。


「俺が今までやってきた事だがな」


 俺が話し始めるとモココたちも真剣に聞こうと耳を傾けた。


「俺ひとりでできる事には限度がある。それはすぐに気付いてしまった。仲間が増えて守るものが多くなると、俺ひとりの手には余る事になってな」


 パチン、と囲炉裏の火が跳ねた。


「それでも敵が襲ってくる。俺が助けに行けない所が多くなる」

「どうしたんでやんすか?」

「結局俺は集団を作った。国を建てたんだ」

「国を……」

「集団の中で頼れる連中にその場所を任せる。そうやって考えを共にする仲間と、社会を共有してきたんだ」

「共有……」


 俺は小さくうなずく。

 あの頃はいろいろと起きたし、いろいろとやった。


「でも基本的には俺ができる事は俺がやって、そのできる範囲で守れる事を守る。それが俺の今までやった事なんだが……どうだろう、参考になったかな」

「はい! あっしもよく考えてみるでやんすよ!」


 できる事をできる範囲で。


「あっし、少し完全を考えすぎてしまった所があるんでやすよ」

「そうだな、そんな感じはしていた。無理をさせてしまったな」

「いえ! それはあっしが勝手にやっていた事でやんすから……あっしらはなんちゃってミートを使って、あっしらで食われそうになる仲間を助けるようにするでやんす」

「ほう」

「羊たちが襲われたら、なんちゃってミートを使って逃げられるようにするでやんす。それで肉食動物たちがそっちに気を逸らしている間に逃げるでやすよ」


 モココの中でも納得できた内容なのか、どこか吹っ切れたような感じがした。


「道具を使って命を守る、か」

「そうでやんす」

「なるほど、それができれば無理のない範囲で仲間を守れる、か」

「そうでやんす」

「だが、森の中のいざこざ……権力争いとかにはグレフルたちも手伝ってもらって、森の中で解決させると」

「そうでやんすね。そこはあっしの力を使っても、言う事を聞かせるでやんす」


 モココは身体をこすって、小さい雷を指先に集めて見せた。


「その力があれば不安はないな」

「えへへ」


 巨大狼のグレフルを倒せる力を持ったモココだ。その所はどうにかできるとは思う。


「羊が狼を従えるなんて、それはそれで不思議な感じはするがな」

「そうでやんすか?」


 俺は少しだけ苦笑いをして肩をすくめる。


「ねえゼロ、ちょっと外がうるさくないかな」


 ルシルが立ち上がって窓から外をうかがう。確かに狼たちの鳴き声が聞こえたような気がした。


「ゼロ、狼たちが……何者かに襲われている……」

「どういう事だ?」


 俺たちは扉から外に飛び出す。

 夕日が周りをオレンジ色に染める中、外にいた狼たちが倒れていた。

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