表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

957/1000

腐葉土作りで栄養満点

 すごく強い土の香りが鼻を刺激する。

 畑の脇に作った肥料を溜めておく穴を作って、そこにいろいろな物を突っ込んでいたが、それが熱を持って匂いも強くなってきた。


「ねえゼロ、これ無茶苦茶臭いんだけど」


 穴の周りは木枠で囲っている。俺が寝っ転がれるくらいの大きさだから、そんなに狭くはない。


「草や木片、枯れ葉とかが主だけど、動物の死骸とかも細かく刻んでばらまいているからな」

「変な湯気が出ているよこれ……」

「発酵しているんだろう。こうやって土の中の虫とかが分解してくれるから、いい肥料ができるんだよ」

「発酵って……腐っているんだよね? なんかアンデッドみたいな臭いがするからさ」

「腐肉だとするとそうなのかもしれないけど……きちんとしたアンデッドは、ユキネみたいに防腐処理をしっかりしているから、肉体の活性化はしていないよな。確か沐浴もくよく液とかを使っていたっけ。ほら、火蜥蜴の革鎧を作った時に」

「あ~、そうだったね。野良動く死体(ゾンビ)とは違うもんね」


 エイブモズの町にいるユキネは喰らう者(イーター)という動く死体(ゾンビ)の一形態で、沐浴もくよく液を使ってその肉体を維持していた。


 失礼な話題を口にしながらも、俺たちは腐葉土をほじくり返し、かき混ぜる。

 こうする事でいい肥料ができるらしい。腐敗とは違う、土のいい匂いがしてきた。


「ユキネたちみたいな喰らう者(イーター)は、若々しい肉体を保っていくのに苦労していそうだな」

「そうねえ。若さの秘訣ってなにかしら。沐浴もくよく液の中身ってなんだろうね。香辛料とか?」

「保存肉みたいな考え方か……。ちょっと不謹慎かもしれないが、でもミイラとかも水分を抜いてスパイスで防腐するらしいからなあ」

「人間サラミみたいな?」

「……辛辣だなあ」

「でもさ、究極、腐らないで老化もしないなら、それって不老って事よね。不死かはともかく」


 思い起こせば、ユキネたちは俺たちと会った時でさえ数百年は生きている、というよりその存在を維持していると言っていた方がいいか。


「俺よりもルシルの方が、長命って事じゃあユキネに近いのかもなあ」

「でもさ、魔族と人間って考えるとゼロとユキネは人間だもん」

「そう言われると、いろいろと違いはあるなあ」

「む~」


 自分で言っておきながら、ちょっとルシルが唇を尖らせて不満そうな顔をする。


「どうしたルシル?」

「まあ、ユキネはおっぱい大きかったもんね」


 ルシルは自分の胸に手を当てて、うつむいてしまう。


「事実からすると確かになあ。だからって別に俺がどうこうしようと考える訳でもないし、どうでもいい話だと思うぞ」

「そう?」

「そうだよ。俺が気兼ねなく触れるのはルシルの身体だけだしな」

「ちょっ、ゼロ~」


 顔を赤くして恥ずかしそうにしているが、まんざら悪い気でもないらしい。照れ笑いを俺に向けてむーむーうなっていた。


「あ、ちょっと動くなよ」


 ルシルの鼻先に付いていた土を俺は袖でぬぐってやる。


「……ありがと」

「お、おう」


 変に素直な返事をするものだから、俺も少し応えるのに困ってしまった。


「よし、あと少し。肥料の処理が終わったら今日の作業は終わりにして飯にしようぜ」

「うん。まだ日は高いから、川に魚を捕りに行こうよ」

「そうするか」


 俺たちは土まみれになりながらも肥料作りを続ける。

 横の畑を見れば、葉物野菜がもう収穫時期を迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ