明るい家屋計画
雨が降り続いている。俺が作り直した屋根はあれから雨漏りもしないで頑張ってくれているが、壁はそうでもなかった。
「風が吹くと横から雨が入ってくるね」
「そうだな、屋根と同じように壁も水や風が入ってこないようにするか」
「やってみる? なんだか雨ばっかりでやる事もないし」
俺はルシルと一緒に今度は壁作りを始める。
壁は屋根の作り方をそのまま使う感じだ。下から長い板を横に渡して、その上に少し重なるようにしてもう一枚板を乗せる。
こうする事で、真横や上から入ってこようとする水や風を押さえる事ができた。
「ぴったりじゃないから、下から入ってくる風はしょうがないけどな」
「それくらいはいいんじゃないかな。気になるようなら小屋の中に壁を塗るとか」
「土壁とかやっている所もあったから、そういうのを真似てみるのもいいかもしれない」
「だね。木の板でもぴっちり押さえれば、だいぶ違うかも」
木材はまだまだあるから試せる事はいっぱいだ。
俺は外側の壁を作り終えた後で、内側の壁作りにも着手した。
「ねえゼロ」
「どうした?」
囲炉裏の火でゆらゆらと影が揺れる。
「壁、できたらさ」
「おう」
「結構暗くなっちゃったね」
「あー」
外からの光はほとんど入ってこない。
それは壁がしっかりと作られているという証拠でもあるのだが。
「なるほどな、確かにそこは気にしていなかったな。それに、空気取りの窓でも作らないと、小屋の中で火はたけないか」
「うん。窓もきちんと考えないとね」
「確かに」
出入り口は無理矢理壁を壊して、とはいえきっちりと切ったから綺麗にできているんだが、どうにか使えている状態。
ただ、密閉性が高くなったという事は、出入り口だけでは光りも空気も入りにくくなってしまう。
「屋根のひさしを長くして、その影になるように窓を作ろうか。そうすれば雨風は入ってこないし、光も直接差し込んではこないからそこまで明るすぎたりはしないけど、真っ暗ではなくなると思う」
「そうね、やってみようか」
俺は木材を適当に積み上げ足場にして、天井近くに窓を作る。
「Sランクスキル発動、剣甲突! 壁に穴を、突き刺して、開けろっ!」
俺が剣で壁を何度も突き刺し、小さな穴をたくさん開けた。その穴の空いた部分をつつくと、壁はその部分だけ簡単に崩れていく。
「空気取り、明かり取りの窓ならこれくらいの奴を小屋の四方に作ればいいかな?」
「いいと思うよ。今ので結構風の流れができたから」
ルシルが言うように囲炉裏の火が揺れていた。出入り口から天井の窓まで空気が流れている事が判る。
「これで暗くなくなるね」
「少しはな。それとは別に、灯りは灯りで考えよう」
「う~ん、必要な時に火をたいていればいいと思うんだけど」
ルシルは囲炉裏の火を見ながら俺が使った足場の板を片付けてくれていた。
「火でもいいけど……Sランクスキル発動、閃光の浮遊球。これで明るくはなるよな」
俺がスキルを発動させると、魔力でできた灯りが俺の目の前に浮かび上がる。
「でもさ、ずっと魔力で灯すのも大変だよね?」
「そうだなあ……。寝ていたりすると消えちゃうし……あ」
「どうしたの?」
「魔晶石でも使えば魔力を溜めておけるから、それを使って灯りを作ろう!」
「あー、そういう使い方していた町もあったね~」
「ああ。確かユキネたちのいるエイブモズの町では、緊急用の街灯に魔晶石を使っていたな」
「それならできそうね。消えかかったら補充するくらいで丁度いいかも」
「一つじゃなくていくつか置いておけば、どれかが消えても真っ暗になる事もないし」
「それがいいわね。だとしたら……」
「魔晶石、探しに行くか」
雨の音がずっとしていた。
「この雨が止んだらにするかな」
「だね~」
少し長引く雨が降る間、俺たちは貯蔵している食糧を有効に使って面倒をやり過ごす。
「雨の日に無理する事もないよ」
「かもな。壁作りで無理しちゃったかもしれないけど」
「それもそうかも……ぷっ」
「あははは!」
俺とルシルは自分たちの言っている事がちぐはぐだったからか、互いの顔を見合わせて吹きだしてしまった。
雨は降り続く。
まあ、のんびりしていればいいか。