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フカフカモフモフを探して

 今日は森へ狩りに出かけている。狙いは羊か毛長牛か、とにかくモフモフした奴だ。


「やっぱりベッドがあるとちがうよね」


 ルシルのこの言葉が決め手になった。

 そういう事ならよりよい睡眠のためになにができるか。

 俺たちの選んだ道は、動物の毛を得る事。獲物を狩って毛を刈るのだ。


「でもさゼロ、モフモフの動物ってどこにいるのかなあ」

「うーん、そういう感覚、俺にはよく判らないんだけど……寒い地域なら毛がいっぱい生えていそうじゃないか?」

「言われてみれば。ねえ、あの山、結構高いよね」


 ルシルの指す先には標高の高い山。頂上の方は雲でよく見えないが、木も生えていなくて暑い季節だというのに雪も積もっているようだった。


「雪が残っているようなら、あったかくしている動物もいるだろうな」

「だねぇ。行ってみる?」

「行ってみようか」


 こうして俺たちは高い山を登っていく。


「これ、この間のグレイドラゴン並みに高くないか?」

「そ、そうだね。結構……登ってて息が切れてきた」

「歩き疲れて苦しいんじゃなくて、空気が薄いからかな」

「多分……そう」


 木の生えていない岩場に出て、辺りに岩と雪が交じり始めた頃。


「ねぇゼロ、あそこ」

「ほう」


 岩場の影に動物が見える。


「山羊かな? それとも羊?」

「どうだろう、よく見えないが……あの距離なら俺の真空波で仕留められるかもしれないぞ」

「やってみる?」

「そうだな、やってみよう」


 俺はゆっくり剣を抜いて、魔力を高めた。


「Sランクスキル発動、剣甲突ソードトラスト! 突き抜けろ真空の刃よ!」


 俺が遠くから剣を突き出すと、その先から真空波が飛び出す。


「ピキィッ!」


 獲物の首を貫通するように真空波が突き抜け、喉と口から血を吐きながら岩場に倒れる。


「やった!」

「行くぞ!」


 俺たちは急いで獲物に駆け寄った。


「これは、羊か?」

「うん、そうみたいだね。やったねゼロ!」

「結構大きいが……」


 俺の仕留めた羊は象みたいに大きい奴だ。


「モフモフだねゼロ!」

「そうだな、ちょっと表面はゴワゴワしているけれど、この上ならフカフカで寝られそうだ」

「だねえ。今はまだちょっと獣臭いけど」

「そりゃあそうだろう。今狩ったばかりなんだから」

「まだあったかいしね」


 ルシルは上機嫌で羊の毛皮をなでていた。


「それにしても大きいなあ。こいつ、この山の主だったりしてな」

「どうだろうねえ。だとしたら山が怒ったりするかなあ」

「う……判らないが、この山の力関係が崩れてしまったりはしないか……」


 そんな事を心配しても仕方がないのだろうが、あまりにこの羊が大きいものだからなにか気になってしまう。


「こいつ、角も結構傷だらけだからな、もしかしたらかなりの実力者だったのかもしれない」


 俺の周りに獣の気配がする。襲ってこないようだが、この巨大羊が狩られたという事実がそいつらに伝わったようにも思える。


「もしかしてこの羊を倒したゼロを倒せば、この山の主になれるって思っている獣がいたりしてね」

「冗談にならないからやめてくれないか」


 確かに今までとは違う雰囲気がこの山を覆っていた。

 殺意ではない。だが、俺を見つめる複数の目があるのは気配で感じる。


敵感知センスエネミーは発動しない程度の意識が俺に向いているってのは、どうも気持ちのいいものじゃないな」

「攻撃してこないならいいんじゃない? それよりもこの羊を持って帰りましょうよ」

「持って帰るって、この急な山を担いでか?」

「そうよ。これくらい簡単でしょ?」

「う、うーん……」


 持ち上げる事くらいは問題無いが。

 俺はヒョイッと羊を肩に担ぐ。俺が羊を担いでいるのに、羊が余りにも大きいから俺が押し潰されているようにも見えるだろう。


「じゃあ俺が持って行くからルシルが道を作ってくれよ」

「いいよ。帰り道を邪魔する木は全部切り倒していくね」


 ルシルは電撃と爆破で道を切り開いていく。

 俺が羊を担いで歩くには十分の幅を確保してくれていた。


「この爆破で俺を付け狙っている獣たちも散ってくれるといいんだがな」


 重たい羊を担ぎながら、俺はルシルの後をついて山を下りていく。

 担いでいる羊を引きずってしまうのは勘弁して欲しい。

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