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巨大な山が防壁の代わりか

 グレイドラゴンの首を切り落とした時にできた穴の奥で光る巨大な黄色い宝石。


「このまま持って帰るのも薄気味悪いからな……。ちょっとつついてみるか」


 俺は剣の先でちょこんと触れた瞬間、まぶしいほどに黄色い光りが辺りを照らし、それが徐々に収まっていく。


「な、なんだったんだ今の光の洪水は……って、あれ!?」


 今ここにあった黄色い宝石が跡形もなく消え失せていた。


「これはドラゴンの魂とでもいうのか。物体というよりは魔力の凝固体と言った方が適切かもしれないな」


 俺はまとわりつくように思えるくらい濃い魔力が満たされている中、剣をしまって辺りを見回す。


「ふうむ、まだもっと奥には行けそうだが……」


 更に奥へ行く事を戸惑うには訳がある。

 足下に響く振動だ。


「まさかな、これって……」


 俺はゆっくりとだが、入ってきた方へと戻る。

 奥の方から洞窟みたいになっている穴の壁が崩れ、天井部分が落ちてきた。


「やべっ、これは危ねえぞ!」


 俺はきびすを返すと、一目散に入り口へと走る。

 今さっき俺がいた場所に大きな岩盤が落ちて割れた。


「あっぶね! あんなの頭に直撃したら痛いじゃないか!」


 俺は頭を抱えながら崩落する洞窟から急いで脱出しようと駆け出す。

 痛いのは嫌だからな。


「あともうちょい!」


 だが、俺の目の前で壁が崩れ、大きな岩が道をふさぐ。


「Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッター! 邪魔する岩は衝撃波で砕くっ!!」


 剣から放たれる衝撃波が目の前の大岩を木っ端微塵に砕き、周りに散らす。


「これで通れるようになったな」


 俺が自分で開けた穴を通り、出口へ向かう。

 洞窟の周りが砕けたり欠けたり折れたりした岩で散乱していた。


「危ねえ、尖った岩が棘みたいになっているから、足に刺さるところだった。もう刺さるのは勘弁だよ」


 俺は軽やかに砕けた岩を避けて洞窟から飛び出す。


「えっ!? 外も砕けているのか!」


 洞窟の中だけではなく、グレイドラゴンの身体全体が超巨大な岩山のようになっている。

 首はもうないが、手足も同じようにボロボロと崩れていた。


「本当にあの光る宝石が魂、ドラゴンの魔力を具現化したものだったのかもしれないな」


 崩れていくグレイドラゴンの身体が山のようにうずだかく積もっていく。


「穴を潰すだけじゃなくて全体も崩れていっているのか……」


 もはやドラゴンの形をしている部分はなく、棘の立った岩山が高く高くそびえているだけだった。


「うーん」


 俺が腕を組んで考えている所に、ルシルたちが降りてきて俺の顔を覗き込む。


「どうしたのゼロ?」

「あのな、このドラゴンの死骸、切り出して石材に使えないかな?」

「なるほど、砦も壊されちゃったしね、再建するのに丁度いいかも。それに、棘も武器として使えそうだし」

「そうだな、鋭いもんなあ。まあこれが上手に切り出せたら、っていう所はあるけどな。どうだろうかなあ」

「それは守備兵の人たちに任せたらいいよ」


 俺はルシルの提案に賛同し、退避していた守備兵たちが戻ってくるのを待つ。


 程なくして守備兵たちが集まり、グレイドラゴンの死骸を見て勝利した喜びと生き残れた安堵と、そしてこのずうたいをどうしようかと悩む姿を見る事ができる。


「どうれ。ドラゴンの死骸、うまく有効活用してくれるといいのだが」


 守備兵たちは俺の言葉を聞いているかどうか判らないが、ドラゴンの死骸そっちのけで、城壁や監視塔の片付けをし始めた。

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