取りかかりは爪先だった
守備兵たちが生き埋めになっている場所はグレイドラゴンの右後ろ脚の部分。俺は山の中腹から飛び降り、ドラゴンの右足の甲を狙う。
「SSSランクスキル発動! 重爆斬! どれだけ大きかろうが、所詮は岩! 先端から突き崩してやるっ!!」
気分的には数百メートルは飛んだだろうか。
俺の落下する勢いとSSSランクスキルの威力がドラゴンの足に突き刺さる。
「グギャァ!」
ドラゴンが今まで上げた事のない悲鳴を轟かせた。
「手ごたえあり!」
俺は剣を深々と突き刺し、更に先端へ魔力を込める。
「続けてSSSランクスキル発動、地獄の骸爆! 剣先から発生する爆発をくらえっ!!」
剣の先端に集中させた魔力を一気に爆発させると、巨大なグレイドラゴンの足が吹き飛んだ。
「グガァァァァ!!」
傷みに苦しむグレイドラゴン。
手足をばたつかせた事で、守備兵たちに覆い被さる部分はなくなった。
「今だ、逃げろっ!! ドラゴンは下がれないし向きもすぐには変えられない! ドラゴンの足跡を逆にたどれっ!」
俺が指示をすると守備兵たちは一斉に穴から飛び出し、グレイドラゴンの進行方向とは逆に逃げ出した。
俺の言う通り、ドラゴンの足跡を通って。
「グッ、クソがぁっ!!」
ドラゴンの足からは血のように岩の破片がガラガラと崩れ落ちていた。
「グレイドラゴン……体液も岩みたいな物なのか……」
傷みに耐えながら、グレイドラゴンが俺に向かって右腕を横薙ぎに払ってくる。
「このっ、食らえッ!」
「甘いな。砕ける事が判ったのなら、後はそれを繰り返すだけだ。SSSランクスキル発動、地獄の骸爆ォ! その腕もらったぁ!!」
剣で突き刺し、内部から爆破をかけると、面白いようにドラゴンの右腕が吹き飛んだ。
「グギャァァ!!!」
右手右脚を失ったドラゴンは、大きな巨体を持ち上げる事ができなかった。
「これ以上移動する事もできないだろう」
「ふ、ふざけるな……我はなによりも大きく偉大なグレイドラゴンぞ! 腕や脚の一本や二本、失ったとて引き下がる訳にはいかんっ!!」
ドラゴンは身体全体に力を溜め、脇腹や肩から棘を造り出す。
「なん、だと!?」
その棘は形を変え、腕や脚に変形した。
「我の手足をもぎ取ったつもりらしいが、我はこうして身体の部位を自ら造り上げる事ができるのだ!」
新しい手足を使ってドラゴンが身体の向きを変える。俺の正面にやつの頭が現れた。
「どれだけ崩そうが、我は復活を遂げるぞ」
「ほう」
俺は正面に見るドラゴンの顔に向かって、剣を突き刺してみる。
「頭部を破壊されても、同じように再生できるかな?」
「ぐ、ぐおぉぉ……!」
俺は手足を爆砕させたように、グレイドラゴンの頭も吹っ飛ばした。
「ゴギャァァァァ!!」
腹の底からうなり声を上げてグレイドラゴンが手足を暴れさせるも、身体を動かすための頭が砕かれた今、その動きは首をもがれた虫のように、ただただ痙攣させているだけだ。
「奥になにか見えるな……」
砕けた首には大きな空洞が口を開けていて、奥に黄色く光る宝石のような物が見える。
「あれは、ドラゴンの心臓か?」
俺は空洞に潜り込み、黄色い宝石に向かって進む。宝石は定期的に明るくなったり暗くなったりしていて、心臓の鼓動にも似た動きを思わせる。
近付くにつれて宝石は俺よりもかなり大きいものだと判った。
宝石は周りの岩壁から岩でできた蔓のような物で吊るされている。
「すごいな、これは……」
俺の身長よりも三倍から四倍は大きいだろうか。それくらいの巨大な宝石が黄色く光っていた。
「それよりもこの空洞、さっき俺がやつの体内にいた所よりも奥みたいだな」
身体の奥、ドラゴンの急所と言えるだろう。
「さて、これを砕いたらどうなるかな」
俺は黄色い宝石に向かって剣を構え直した。