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洞窟へ潜入

 思ったよりも大きな横穴が広がっている。大人のドラゴンが群れをなしても悠々と通る事ができるくらいの高さと幅を持っていた。


「俺が剣で軽くほじくった程度でここまでおおきな穴が空くとは思わなかったな……」


 俺は独り言をつぶやいて辺りをうかがう。


「ルシル、どうだ聞こえているか?」


 思念伝達テレパスでつながっているルシルに応答を求める。


『どうしたのゼロ』


 ウィブに乗って上空で様子を探っているルシルの声が頭の中に響いた。


「巨大な横穴を見つけた」

『穴!?』

「そうだ、洞窟と言ってもいいだろう。ちょっと岩壁を掘ったら穴につながったんだ」

『そうなんだ……私も行く?』


 上空からの偵察をしてくれているが、状況が変わったから合流してもらった方がいいだろうか。


「いや、ルシルは上で異常がないか引き続き見てくれないか?」

『それはいいけど……大丈夫?』

「ああ、俺は平気だ。お前も火山に気を付けてくれよ」

『うん、判った。じゃあ私たちは空から見ておくから。何か変わった事があったら思念伝達テレパスで知らせるね』

「ああ頼む」


 俺は左手を前に突き出し、スキルを発動させる。


「Sランクスキル発動、閃光の浮遊球(フローティングライト)。明かりを、ともしておくか。じゃあ奥に行ってくるから」

『うんゼロも気を付けて』

「ああ」


 俺はルシルの声を頭で感じながら暗い洞窟に足を踏み入れた。


「天井にはギリギリ閃光の浮遊球(フローティングライト)の光が届くくらいか。中に入ってみると余計感じるが、結構広いんだな……」


 右手に持った剣を振ってみるが、この広さではどこにもぶつからない。


「広さは十分。グレイドラゴンが隠れるにはうってつけの洞窟、だな」


 俺は柔らかな明かりを頼りに奥へと進んでいく。


 鍾乳洞のように天井からつららのような岩が垂れ下がっている。

 俺の中に少し芽生えた違和感。


「この洞窟、広さギリギリの所をドラゴンが通ったとしたら、あんなに長い鍾乳石は残っていないんじゃ……。巨大なドラゴンの身体で折れてしまいそうだからな。それでなければドラゴンの身体がもっと小さい……」


 鍾乳石を避けて通れるとすれば。

 地面から鍾乳石までの距離はせいぜい人間の身長の三倍から四倍程度か。


「いやいやレッドドラゴンを踏み潰すくらいの大きさだ。この洞窟めいっぱいの大きさだったらそれも考えられるが、それより小さいというと無理がある……」


 足下を照らす光りが俺の違和感を決定的な物にした。


「地面からも鍾乳石が生えている……」


 俺の背筋に冷たい物が走る。


「外の足跡は大きな物を引きずったような跡が延々と続いていた。それがこの洞窟に入ったとしたら、地面から生える鍾乳石なんか……」


 簡単に折れてしまうだろう。そう思った俺は自然と言葉を飲み込んでいた。


 地鳴りのような音が洞窟の奥から聞こえてくる。


「ドラゴンが……いるのか……」


 たまたま歩行して足下の鍾乳石を折らずに済んだのかもしれない。その可能性も否定できない俺は、警戒をしつつ洞窟を進んでいく。


『……っ! ゼロっ!!』


 ルシルの思念伝達テレパスが俺に伝わる。


「どうした!?」

『ゼロ、そこからすぐに出て!』

「どういう事だ!?」

『いいから早く!』


 一体なんだって言うんだ。奇妙な音が聞こえてきて、探索はこれからだというのに。


「状況を、教えてくれ!」

『山が……山が動いているの!』

「そりゃあ噴火している山も近くにあるし、火山性の地震とか」

『そうじゃないの! 山が少しずつ進んでいる(・・・・・)の!!』

「なっ!?」


 山が、移動しているだと!?


 ルシルからの情報は、俺の中のモヤモヤを解決してくれる鍵になりそうだ。

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