大きな火山と大きな山と
俺の鼓舞が効いたのか、ワイバーンの力を振り絞って、ウィブは南へと飛んで行く。
そうして見えてきた物が目の前に広がった。
赤く赤く、とにかく赤い世界。
「なっ……」
「これって……」
俺もルシルも理解した。
「あれが……」
そこには巨大な火山がそびえ立っていて、大量の火を噴き出している。
石、などという曖昧な表現ではない。
「生きている火山、カルデラン火山か」
「絶賛噴火中、って事ね」
噴き出した溶岩が辺りを散らす。対策をしていない状態で、俺たちは火山弾が降り注ぐ場所へとやってきたのだ。
「確かに絶え間なく噴火をしている辺りには、噴火による雷雲が生じるというわけだ」
「そうみたいね」
ウィブに避けてもらいながら、俺たちは火山と雷について考えてみた。
「噴火している限りはあの雲はなくなりそうもないな。噴火が雲を呼び、雲が雷を呼ぶ」
「うん……」
「あの分厚い雷雲は、この火山のせいだったのか……」
「でもさゼロ、火山の隣……」
ルシルが指摘する物、まさに噴火している火山の隣だ。
俺はその塊を見る。カルデラン火山の脇にそびえ立つ大きな岩山。ややもすれば火山よりも大きい山がそびえ立っていた。
「あの巨大な山、あいつも活火山かのかな」
「噴火口はないから、中身までは判らないわね……」
「ウィブ、噴火している山に近付くのは危ない。隣の山に行けるか?」
俺はウィブに噴火していない方の山へと向かわせる。
雷の落ちる中、ウィブはカルデラン火山とは別の大きな山へと飛んでいく。
「あの山だったら火山の様子がよく判るね」
「そうだな。だが……」
俺はなにか不思議だが確信した物を感じていた。
「あそこにはなにかがあるぞ」
「え?」
火山ではないなにか。
「降りてみれば判る。あんなに大きな山、きっとグレイドラゴンのヒントがあると思う。この山の中に潜んでいる、とかな」
「なるほど。岩山なら、岩属性のグレイドラゴンが隠れていてもおかしくないもんね」
「ああ、そういう事だ」
俺たちはそびえ立つ岩山の中腹に着陸する。
山としては珍しく、草木が一切生えていなかった。ふもとに至るまでも。
「火山のせいだろうか、熱や硫黄の影響で大地も草すら生えない荒れ地になっている」
「そうだね、水も少ないんだろうね。苔もないくらいの山みたいだし」
「だが、ドラゴンの隠れる場所もないだろう。探すにはうってつけだ。頂上付近から辺りを見渡せば、グレイドラゴンの足跡が見つかるかもしれない」
「うん、探そう……あれ?」
ルシルがなにかを見つけたようだ。火山の脇を指さす。
「火山を避けるように、筋が見えない?」
「どれ……うん、確かになにかを引きずったような跡があるな。それがずっとこの山まで続いているって言う事は」
「この山のどこかにグレイドラゴンがいるって事だね?」
「そうだな。疑う気持ちもなかった訳じゃないが、この引きずった跡がグレイドラゴンの証拠になればいいんだが」
「そうだね、まずはこの山を探してみよう!」
俺はウィブに頼んでルシルを乗せた。上空から痕跡を見つけられないか確かめるためだ。
「ゼロは大丈夫?」
「ああ、俺は山を歩いてみる。上空から見えないなにかが見つかるかもしれないからな」
「判った。私は空から調べてみるね。他に痕跡がないか」
「頼むぞ」
「任せて!」
ルシルはウィブの背中にある鞍に乗り、空へと飛んでいく。
「なにかあったら思念伝達で知らせろよ!」
「うん! 行ってくるね! ゼロも気を付けて!!」
「ああ!」
簡単な挨拶を交わすと、ウィブは上空へと飛んで行った。ルシルを乗せて。