邪魔者を排除しに行くために
まあまあ話はうまく行ったようだ。ララバイは幼女たち、いや幼いドラゴンたちを王国内で養う。ドラゴンたちは威嚇の圧力をもってこの辺りに出没する魔獣どもを押さえる。
万事解決。
「だがな、ドラゴンが二人いたとして、魔獣や魔物が追い払われたりするのかどうか、そこの所を確かめたい」
俺はごくごく当たり前の話をしているつもりだ。
それなのに、だ。
「おい、なんできょとんとしているんだよ」
ドラゴンたちもそうだが、なぜだかララバイも不思議そうな顔を俺に向けた。
「え?」
幼女の姿をしたままのソウキュウとディアーナが眉をひそめて俺を見る。
「こんないたいけな幼女に魔獣狩りをしろと?」
嫌そうにつぶやくソウキュウを見て、俺の額に青筋が立つ。
「幼女ったって仮の姿。本性はドラゴンだろうが」
「ぐっ……」
幼い女の子に見えてもこいつらはドラゴン。ブルードラゴンとレッドドラゴンだ。
二人が揃った時の威圧感と言ったら、俺でも本気で殴らなければならなかったくらい。
俺も結構、そこまで威力があるとは思っていなかった。
「威圧で魔獣を退治できる。それはいい。だから実際にそれをやって見せてもらおうという訳だ」
「な、なんであたしたちがそんな事をしなくちゃならないのよ!」
「証明できない相手を、ただ養っていく訳にはいかないだろう。王国にも予算という物がある。成果を生み出さない者に貢ぎ物をするいわれは無いからな。食い物なり財宝なりを受けるのなら、それに見合った働きをすべきだ。」
俺はそう口にする。ごくごく当たり前の話、その二だ。
「あの、王国としてはただいてくれるだけでむぐっ!」
変な事を言いそうになったララバイの口を手で無理矢理ふさぐ。
「むぐぐぐ……」
「いいから黙っていろ。で、ドラゴンたちとしたらどうするね? この辺りの魔獣、狩り尽くすことはできないとでも言うのかな?」
俺は意地悪く聞いてみる。
「ぐっ……いいわよ、やったろうじゃん!」
「そうだよソウキュウ、あたしたちの力、人間たちに見せつけてやろうよ!」
「うん! そうよ、そうしようよ!!」
ドラゴンの幼女たちが手に手を取って意気込みを語っていた。
俺は更に発破を掛ける。
「ようし、そこまで言うのならやってもらおうか。外には凶暴な猿やら狼やらがひしめき合っていたからな」
「う……」
ソウキュウが息を呑む。
「だ、大丈夫だよねディアーナ?」
「う、うん。大丈夫、ソウキュウ、あたしたちなら」
「だよね」
「だよね」
どうやら話はまとまったようだ。
「じゃあどうするね? あの隙間道を戻ろうか?」
俺はあの狭さを思い出すと、ちょっと憂鬱になるが。
「え?」
「え?」
ソウキュウたちの顔が一瞬曇るが、すぐに落ち着いた様子になる。
「まさか、崖の穴から飛んでいくとか……」
「そんな訳ないでしょ。ほら、そこに地上へ行ける階段があるから」
ソウキュウの示す先には、大きな横穴と上に続く階段があった。
「なっ、なんでこれを最初に教えなかったんだよ」
「当然でしょ。裏門なんて教える訳ないじゃない」
「ぐっ……」
今度は俺が言葉に詰まる番。言われてみればその通りかもしれないが。