子供二人を養うという事は
幼女を育成する。
「お、おう……」
俺は間抜けな反応をしてしまった。
ララバイはこのドラゴンたち……いや、幼女二人を引き取って育てると言っている。
ルシルは正直、理解できない様子だった。
「本気なの、ララバイ?」
「もちろんですルシルさん! この子たちに必要なのは周りの愛情。親兄弟に捨てられ孤独に過ごす事になった哀れな環境がこのようにすさんだ心根を形成したのです!」
「う……うん」
ララバイの言葉に押されてルシルも言い淀む。
「ララバイ、勝算はあるのか?」
「ええ。そこはお任せ下さい」
やけに自信満々なララバイだが、一応は一国の王が発言した事。
「いいだろう。どのようにするのかは俺も判らないが、お前がそこまで言うのであればこの幼女二人を託そうではないか」
「はい! お任せあれゼロさん!」
なんだかやけにララバイは意気込んでいるが、大丈夫なのか? そもそもこいつらはドラゴンだぞ。
「これはソウキュウちゃんとディアーナちゃんが判ってくれればの話ですけど……」
うさんくさそうな顔をしてララバイを見ているソウキュウたち。それもそうだろう。自分たちを殴り倒した奴にくっついてきた男が、身元引受人になろうというのだから。
「おいララバイとやら!」
「なんだいソウキュウちゃん」
「あたしらは別にあんたの所に厄介になろうって思っていないんだからね! ここでディアーナと一緒にいられれば、あたしは無敵なんだから!」
ソウキュウの怒りにディアーナもうなずく。
「あたしたちはここにいれば十分だ! なにも人間たちの厄介にはならないからね!」
食ってかかるソウキュウたち。
俺が一撃でのしたのだから、今は力で反発しないつもりらしいが、それでも自分たちの意見が通らない場合にはドラゴンの姿に戻ってララバイとの戦いも辞さないだろう。
それくらいの意気込みを俺は感じ取った。
「そう、そこですよ!!」
ララバイは我が意を得たりといった表情で幼い二人を見る。
「この地を我が国、マルガリータ王国の領土とさせてもらいたい」
「だからそんな話はだな」
ソウキュウの反論を手で制するララバイ。
「そこを呑んでもらいたいのです。そうすれば私たちもあなた方ドラゴンに援助ができる」
幼女たちに援助する王様。
う~ん、耽美な響きだ。
「おいララバイ、それってまさか」
「はい、お二人の影響力を生かしてこの地を平穏な場所にしていただきます。そうすればこの辺りの大地は私たちが自由に行き来できる。そして耕作も可能です」
やはりな。
「その対価は当然払う、そういう事だな?」
「そうですゼロさんのおっしゃる通り。私たちの平穏の見返りとして、このドラゴン姉妹にはなに不自由なくお過ごしいただくよう、肉、酒、財宝をお持ちします!」
「肉と財宝はいいとして、流石に酒はまずいだろう」
「いえ、マルガリータの酒は諸国でも美食家をうならせる逸品ですよ!」
「いやそういう事じゃなくてだな……まあいい、食べ物と暮らしに不自由はさせない、だからドラゴンの力をマルガリータ王国のために使ってくれ、と」
ララバイは大きくうなずいてみせる。
「と、言う話だが、お前たちはどうする?」
俺はソウキュウとディアーナに問いかけた。
「肉……」
「財宝……」
幼女たちの目は既に欲望で覆われてているようだ。俺の問いにも上の空でうなずくばかりだった。