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乾かし乾かし乾かしまくる

 電撃を何度も受けてブルードラゴンのウォーテールがドラゴンブレスを吐きまくる。


「ウィブ、かわしてくれ!」

「当然だのう!!」


 急降下、急旋回で直線的なドラゴンブレスを避けるウィブ。背中の鞍に乗っている俺とルシルは、逆さまになった状態でも振り落とされないように、ベルトを腰に結んで靴も鞍に革紐で縛り付けている。


「これでもまだドラゴンは揺らぎもしないか!」

「ゼロ、またブレスがくるよっ!!」


 ブルードラゴンのブレスは周囲の水分を吸い尽くす。

 人体にも影響が出るくらいの水分を持って行かれるのだ。


「こっちはルシルの治癒で体液も回復させるからどうにかなっているが……」


 俺は近くの地表を見る。

 そこは草木が枯れて赤茶けた土が見えていた。


「木も……枯れている」


 ドラゴンがブレスを吐くたびに、不毛な土地が増えていくようだ。


「これは早めに決着を付けないとな」

「だね!」


 ルシルは俺とウィブの回復に専念している。こうなると攻撃ができるのは俺だけ。


「鱗の剥がれた所を集中的に狙うぞ!」

「任せろ勇者よ!」


 ブルードラゴンの弱点を探りながらウィブが空を駆け巡る。


「ブレス!」


 ルシルの警告が空に響く。

 直撃は避けるものの、皮膚がシワシワになっていくのが判る。ルシルがすぐに治癒を施してくれて、体力は元に戻っていくが。


「どうも自分の体液が濃くなっているような気がして」

「どうしたの? 治癒が効かなくなっちゃってる?」

「いや、治癒は効いているんだが、どうも頭痛がし始めてな」

敵感知センスエネミーじゃなくて?」

「あれは耳の奥が痛くなる感じなんだよ。殺意を受けると」

「そっかぁ。それじゃあ血が濃くなっちゃっているのかもね。それこそ水分を魔力で水増ししているんだもん」


 こりゃあ無事に戦いを終えたら、水分補給をしてゆっくり養生する必要がありそうだ。

 だが、今はそんな事を考えている場合じゃない。


 ウィブの翼がブルードラゴンの尾をかすめる。


「おおっと!」


 ドラゴンの尾には無数の棘が生えていて、触れただけでもズタズタに切り裂かれてしまう。


「だが!」


 攻撃をかわしたことで、俺たちはドラゴンの背後を取ることができた。


「ねえゼロ」

「どうした?」

「相手は水と嵐をつかさどるドラゴンだよね?」

「そうらしいな」


 俺は電撃を放ちながらルシルの言葉に耳を傾ける。


「水だと電撃はよく伝わって効果的だよね」

「そうだな」

「じゃあさ、火ならどうかな?」

「ふむ」


 確かに水の弱点は火。火の弱点は水だ。

 大量の水は火を消してしまうが、大量の火は水を蒸発させてしまう。


「よし、試してみようか! Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! ドラゴンの身体を取り巻くように渦を作れっ!」


 俺の放出した炎の帯がブルードラゴンの全身をなめまわすように覆い尽くす。


「ゴガァァアァァァ!!」

「効いてる! 効いてるよゼロ!」


 ドラゴンの苦しそうな叫び声は、今までの電撃とはまた違ったものだった。


「燃えろ燃えろっ!!」


 俺は矢継ぎ早に炎を投げつける。

 爆炎に包まれたドラゴンはもがき苦しみ宙をのたうち回る。


「大地を、俺たちをカラカラにしてくれた礼だ! 今度はお前が乾いていけっ!!」


 逃げようとしても俺の炎はまとわりついていて離れない。

 ドラゴンの鱗が剥がれ、欠けて落ちていく。


「そろそろ倒れたらどうだ!」


 俺は特大の炎を投げ、ドラゴンの鼻先で爆発させた。


「ギャァァァ!!」


 ドラゴンは大きな口を開けて喉の奥をうならせる。


「ゼロ! 来るよ!」


 慌てて射線から逃れようとするルシルを俺が制す。


「いや、もう終わりだ……」


 ドラゴンはブレスを吐こうとするが、もはや喉の奥に吐き出す水分がなくなっていた。


「これでな!! SSランクスキル発動! 豪炎の爆撃(グレーターボム)っ!! 砕け散れっ!!」


 俺はドラゴンの口の中に巨大な爆炎を放り投げると、ドラゴンの口、喉、そして胸の辺りが徐々に炎の光りで明るくなっていく。

 

「爆散っ!!」


 ドラゴンの腹の中で爆発させると、ドラゴンは一瞬膨らみ、直後に内部から炎が噴き出す。


「ゴガァァアァァァ!!」


 天をも貫くドラゴンの悲鳴。

 それが鳴り止む前に、爆発の音と光りでかき消してしまう。


「ウィブ、退避だ!」

「承知っ!」


 爆発に巻き込まれないよう、俺たちはドラゴンから離れた所を飛んでいく。


「やったねゼロ」

「ああ」


 巨大な火の玉が徐々に消えて肉片が地面に降り注ぐ。

 既に体液はカラカラに乾いていて、黒焦げになった肉と骨だけがバラバラに落ちていった。


「のう勇者よ」


 ウィブが身体の向きを変えて左手にドラゴンの爆発が見えるように飛ぶ。


「あのドラゴン、少々小さくはなかったか?」

「ん?」


 言われてみれば、始めに出会ったのはもう少し、いやもっと大きかった気もする。


「だがブルードラゴンは縄張り意識が強いドラゴンと聞く。そんな奴が何匹もいるとは……」


 そう、通常のブルードラゴンであれば、だ。


「ゴギャァァァァ!!」


 俺たちよりも高い所から鳴き声が聞こえ、それと同時に日の光をさえぎる影が現れる。


「まさか……」


 俺たちが見上げた先に、もう一体のドラゴンが飛んでいた。

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