表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

899/1000

水対策で吸い取られて

 平原の中に通る道がいくつも折り重なり、大きな町に集まっていく。中央の大切な地区を守るように城壁が出来ているが、その周りにもバラックのような小屋が無数に建っていた。


「マルガリータ王国もかなり賑やかになってきたな」


 俺はララバイの後ろを付いていく。


「私たちが過去からこの時代に移り住みまして、そこから一気に流通が激しくなりましたもので。流石に千年前の城壁は崩れてしまっていましたけど、当時の町並み、区画を上手く使って再建することは簡単でした」

「だが、あの当時よりも人が多いように見えるが」

「そうですね、商人が行き交う中心地として急に発展したものですから、城に収まりきれない人たちがスラムを形成していたりしまして」

「治安は悪くなっていないのか?」

「難しい所です。いつの時代にも悪事を働く者が絶えませんので、町の整備と警備である程度は」


 ララバイは思い通りに行かない政治に加えて今回の襲撃だ。疲労の色が濃く出ていた。


「民の生活を豊かにするためにも、治水が必要だったという事か」

「その通りです。流通によって食料はどうにかなりますが、水が無いと生きてはいけません」

「だがその治水工事でブルードラゴンの縄張り争いになったのか」

「はい。ウォーテールは西の海岸近くに住むドラゴンでした。下流の排水に運河を造っていたのですが」

「別の運河を造って、ドラゴンの縄張りから出て行くっていうのはどうなんだ?」


 ララバイは首を横に振る。


「私たちが引き下がっても、一瞬だけとはいえ領域に入った者は許さないようなのです」

「なんともなあ……」


 話ながら俺たちはララバイの執務室に案内された。


「適当におかけになって下さいね」


 ララバイにうながされ、俺たちは来客用のソファーに腰掛ける。

 壁に掛かっている肖像画やカーテンなどは、あまり華美ではないが質がよさそうだ。


「流石に流通の要衝なだけはある。いい物が入ってきているみたいだな」

「まあ、私としてはこれでさえ豪勢だと思うのですけどね、豪商とも会談をする機会もありますので、国王としての体裁も考えるとこれくらいはどうしても」

「いやいや、そう謙遜することもないだろう。国王が貧しい暮らしをしていると、利益を求める商人たちも贅沢が出来なくなってしまう。見せかけだけでも豪華な姿を見せるというのも大事だぞ」

「そんなものですかね。元々三男ですから、豪華とか贅沢とかは私にはどうもしっくりこなくて」

「まあ徐々に慣れていけばいいさ。それはさておき」


 俺は部屋の端に置いてあった模型に近寄る。この辺りの地形と建物を再現したミニチュアで、運河の建設計画も形になっていた。


「上流はそれなりに大きな池があるな?」

「ええ、この池から生活用水を引き入れるのが、この運河計画の基本です」

「ふむ。今は工事をしているから水は少なめにしているとか?」

「そうです。でも工事はほとんど進んでいないのです。ウォーテールのせいで……」

「なるほどな。ちょっと大変かもしれないが」


 俺はミニチュアの池にある水門の模型を指で弾く。


「なっ、ゼロさんなにを!?」

「見ての通りだララバイ」


 模型の運河は俺の指で破壊されて大きくえぐれていた。

 ミニチュアでは水は流れていないが。


「ララバイ、案内を頼めるか?」


 ララバイに拒否する様子は見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ