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一路マルガリータへ

 ルシルが呼んでくれたワイバーンが小屋の側に降り立つ。


「ウィブ、よく来てくれたな!」


 俺は飛んできてくれたワイバーンのウィブにねぎらいの言葉をかけて背中の鞍に飛び乗る。


「急な呼びかけで済まないなウィブ」

「なあに、勇者に呼ばれたとなれば儂も行かねばなるまいのう」

「ははっ、まだ俺を勇者と言ってくれるか」

「儂からすれば、おぬしはいつまでも勇者だからのう、はっはっは」


 俺に続いてルシルとセシリアが乗り込む。


「アラク姐さんは行かないのか?」


 村人たちと残っているアラク姐さんは、名残惜しそうに俺を見ていた。


「行きたいのはやまやまだけどさ、アラク姐さんはゼロちゃんを呼ぶために村の人たちを助けていたんだけど……どうも責任を感じちゃってね」

「そうなのか」

「それにさ……」


 アラク姐さんの影に隠れるようにしてデュビアが顔をのぞかせる。


「この子の面倒も見てやらなきゃね」

「そうか」


 俺はデュビアの視線を受け止めた。


「アラク姐さんの子供だったら、俺たちの家族みたいなものだ。立派な大人に育ててくれよな」


 俺の言葉を聞いて、アラク姐さんが目を見開く。


「か、家族……。アラク姐さんとゼロちゃんの……家族っ!?」

「ああ。俺たちはみんな仲間で家族だ」


 それが国を治める者と民の絆だ。


「うん、解ったよゼロちゃん」


 アラク姐さんは目を潤ませながら何度もうなずいている。


「じゃあ行くな! ブルードラゴンをどうにかしてくる!!」

「うん! ゼロちゃん気を付けて!」

「ああ!! 行ってくるな!!」

「はぁぅ……」


 アラク姐さんはなぜか身体をくねらせながらうめき声を上げていた。


 俺たちは鞍につかまってウィブが飛び立つ勢いをこらえている。すぐに地上にいるアラク姐さんたちが小さくなっていった。


「戻ったら村人の事も考えなくちゃな。なあセシリア、ガレイズの町で彼らを引き受けることは出来るかな?」


 俺の問いに、セシリアは耳をそばだてて聞いている。


「なんだって!? 風の音でよく聞こえないんだが!!」

「フォレンドにつかまっていた村人たちを、ガレイズの町で養えるかって聞いているんだよ!!」


 ガレイズの町は、城塞都市ガレイの跡地に造り始めた街だ。ガレイの頃と同様にセシリアたち貴族が町の再建を担っていたが、今はそれに加えて商人や千年前から避難してきた人たちとは別の、今まで生活していたボンゲやガンゾの人たちも参加して復興にあたっていた。


「そうだね、評議会にはかってみるよ」

「頼む」


 セシリアは大きくうなずいて了承する。

 そこへルシルが耳打ちをしてきた。


「ねえゼロ、こんな事言ったらなんだけどさ」

「なんだよルシル」


 上空で風が俺たちの会話をかき消す。雲を抜ける時は顔に水滴が付くような感じもする。


「ちょっと勘違いさせちゃったんじゃないかなあ、って思うんだけど。気のせい?」

「なんの事だ?」

「アラク姐さんだけどさ」

「ん? なにか問題でもあったか?」


 ルシルは少し困ったような、少し怒ったような顔をして俺を見ていた。


「ううん、やっぱなんでもない」


 それだけを言って、ルシルは黙ってしまう。

 いったいなにが勘違いなのか、俺にはさっぱり解らなかった。

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