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山が燃える

 俺は軽い足取りでドラゴンブレスをかわしまくる。だが、俺の放つ炎や電撃も弾かれてしまう。

 そのせいもあって、木で組み上げられた山の至る所で煙が立っていた。


「くそぅ、この人間めぇ!!」


 グリーンドラゴンのフォレンドが相変わらず足を踏みならして俺に攻撃を仕掛けてくる。

 ドラゴンブレスは酸の飛沫を含んでいる危険な物だが、当たらなければ大丈夫だ。


「ゼロ~、頑張ってぇ~!」


 いつの間にか遠くに行ってしまったルシルから応援の声が上がる。かなり距離があるから戦闘の余波は届かないようだ。

 まあ、それがいつまでもつか、といった所だが。


「人間めぇ! 人間めぇ!!」


 ドラゴンは大暴れして木の破片をまき散らす。

 たまに、俺の事を忘れて荒れ狂っているようにも思えるくらい、攻撃の精度が落ちてきた。


「ええい、こうなっては仕方がない。これだけはやりたくなかったが……Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! 荒れ狂え炎の幕よっ!」


 俺が両手から放出するのは炎の塊。長く長く噴き出すことでそれが帯状になり、勢いを付けることで渦を巻き始める。


「ゴワッ!? なんだこの竜巻はっ!!」


 突然目の前に現れた炎の渦がフォレンドを襲う。


「一瞬動きを止めたのが命取りだな。続けてSSランクスキル発動、豪炎の爆撃(グレーターボム)!! 爆発し、弾け飛べっ!!」

「なっ、なにぃっ!!」


 俺の放った火球がフォレンドに向かっていく。

 同時に巨大な炎の塊に囲まれたフォレンドが翼を広げる。


「我の風圧で消し飛ばしてやるわい!!」


 フォレンドが翼をはためかせて風を作ると、その勢いで炎があおられて消えそうになった。


「どうかな?」

「なんだとぉ!?」


 俺が次々と炎を生み出し、炎を強化させる。フォレンドがいくら風を送ろうとも、炎は消えるどころかその風を飲み込もうとさえしていく。


「ええいっ、こうなれば……」


 フォレンドが大きく息を吸い込み、胸の中で力を溜める。


「散れっ!!」


 特大のドラゴンブレスが炎を消しにかかる。

 既にフォレンドの吐くブレスは酸の洪水。その水分で炎が消えかけてしまう。


「どうだぁ! 人間がドラゴンに楯突くからこうなるのだぁ!」


 酸を吐ききったフォレンドは、勝ち誇ったように空へ向かって吠える。


「本当にそう思うのか?」

「なっ!?」


 フォレンドの目の前にあった炎は確かに消えていた。

 だが、爆散した炎が山のあちこちに飛んで、積み上げた木に引火している。


「お前の届かない所にまで、飛んで行ってしまったからな」

「木が……我のコレクションたちがぁ!!」

「無駄に俺が火を作っていた訳じゃない。散った火はバラバラになってもこの山を燃やしていたんだ」


 俺が魔力を込めると、飛び散った炎が更に燃え上がった。


「おわっ!? やめっ、やめてくれぇ!! 我の、我のコレクション、我の城がぁ!!」

「こうなったら止められない。一年くらいは燃え続けるんじゃないか?」

「しょ、しょんなぁ……」


 俺は後方にいるルシルたちへ呼びかける。


「村人たちの避難は済んだな!?」

「うん、さっき最後の一人が脱出したって知らせが来たよ!!」

「よし、時間稼ぎの茶番は終わりだ」


 燃え上がる炎の中、俺はゆっくりと剣を抜く。


「燃える……我の城、我の全てが……」

「残念だったな、美術品を集めるには、もっと違うやり方があっただろうに」

「違うやり方だと?」


 フォレンドはオロオロしながら俺の顔を見る。


「共存すること、だよ」

「共……存」

「力で押さえつけるのではなく、協力関係を結んで集めればよかったんだ。邪魔だからといって人間を排除したり、森の動物が住めなくなるようにしたり、そんな事をするから恨みを買って復讐されるんだ」

「なにをバカなっ! 我は最強のドラゴン、グリーンドラゴンのフォレンドだぞ!!」


 フォレンドが口から酸の唾液を垂らしながらわめく。


「力に溺れた哀れな生き物よ……」

「死ねぇ、人間!!」


 俺が剣を構えた所でフォレンドがなりふり構わず突進してくる。


「SSSランクスキル発動、重爆斬ヘビースラッシュ! 切り裂けっ!!」


 フォレンドが正面からぶつかってくるが、剣を振り下ろした時には真っ二つになっていた。左右に分かれた巨体が俺の後ろで炎に突っ込む。


「炎の山はお前への手向けだ。人間からの最後の贈り物としてな」


 燃える山の中で、フォレンドの身体も一緒に焼けていった。

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