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塩を巡る賊ども

 カインが外から入ってくる。手には鉢植えを持っていた。


「なっ、それはワシの……」

「ゼロ様あったにゃ、この鉢植えにゃ!」


 カインには先行してエッチョゴの部屋に忍び込んでもらったのだ。猫耳娘の能力とでも言うのだろうか、隠密行動はお手のものらしい。


「会長さんが部屋を出て行ったからその後こっそり持ってきたにゃ」

「カイン、今それを話しちゃったらこっそりじゃなくなっちゃうけどね」

「ルシルちゃん、目的は果たしたからいいのにゃ~」

「ま、そういう事ね」


 俺はカインが持ってきてくれた鉢植えを見る。

 そこには月明かりに照らされた小さな花がたくさん咲いていた。


「塩の中毒に見せかけて徐々に心肺機能を弱らせる、ジギマルスの鉢植えがお前の部屋にあったという事だが」

「これは、ワシは心の臓が弱くてな、元気づけるためにこれがいいと旅の医者に聞いたのだよ」

「だが使い方を変えれば心の臓の動きを不確かにする効果もあるらしいな」

「そ、そんな事は言いがかりだ! ワシは自分の……」


 俺は鉢植えの花をむしるとエッチョゴの口に入れようとする。


「まっ、そんなに入れたら死んでしまう、や、やめろ!」

「前会長にこれを与えていたのはお前の指図だな?」

「ち、ちが」

「違わない、よな」


 俺は指ですりつぶした花の汁をエッチョゴの口に近づける。


「違わない、違わないです、ワシが命令した!」

「そうか」


 エッチョゴを放して自由にする。


「どうだ、その力をワシの、いや凱王様のために使わんか? くたばりぞこないのジジイを助けても先が見えている。ワシならこの村を牛耳っておるからな、なんでもできるし塩だって使い放題だ。それにお前たちの畑にも協力を続けよう。な、悪い話ではないだろう?」


 エッチョゴが早口でまくしたてる。


「畑はどちらにしろ俺たちが継続的に使うわけではない。村に渡すだけだから後は村の連中が好きにしたらいい。だが凱王というのは何者だ? お前の背後にいる者か?」

「凱王様は世界を支配されるお方だ。凱王様のお力添えがあったからワシも会長の椅子に座れた。バイヤルのジジイよりももっと力のあるお方だ」


 凱王か。初めて聞く奴だが魔王のルシルがいなくなってから進出してきた奴らの一人かもしれない。


「凱王という奴には少し興味があるな」

「だったら、いや、でしたらワシがお引き合わせを」

「いや」


 入り口から声がしてエッチョゴが言葉を飲み込む。


「それには及ばんよエッチョゴ。このバイヤルの息のあるうちはな」


 入り口にはセイラに肩を借りながらかろうじて立っている老人、バイヤルがいた。


「バイヤルさん、大丈夫なの!」


 シルヴィアが駆け寄って肩を貸す。シルヴィアとセイラに抱えられるようにしてバイヤルが立っている。


「懐かしいなシルヴィア。元気そうでよかった」


 息も荒く咳き込みがちにバイヤルが話す。


「凱王はこのゾルト村に手を出してきた魔界の住人だ。別大陸で絶大な力を誇っているらしい。だがエッチョゴは凱王と話すらできん立場。奴に頼んだとしても無駄なことよ」

「なっ、この老いぼれがあ!」


 エッチョゴが怒りに声を荒げる。


「ええい者共、出合え出合えぃっ! ワシに逆らうこの老いぼれどもを叩っ斬ってしまえぃ!」


 エッチョゴの呼びかけで扉という扉が開き、中から荒くれ者たちが一斉に出てきた。

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