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覚悟の違いは結果の違い

 俺は剣を構えてガウスに立ち向かう。


「か、形だけ……だよ、ね? アタクシには人質がいるんだし……」


 俺がセシリアたちを気にせず攻撃をしようとしている事にガウスが目を白黒させる。


「残念だなガウス。俺が世界と仲間を天秤にかけるとか、そんな甘っちょろい奴だと思ったのか?」

「えっ、それってどういう……」


 俺の毅然とした態度にガウスがキョドっていた。


「セシリアもウィブも、ここでお前を討ち漏らすくらいなら喜んで己の命を捧げるとさ!」

「しょ、しょんなぁ! 馬鹿なぁ!!」


 あっけにとられるガウス。それに比べてセシリアたちは驚くそぶりも見せない。


「俺の攻撃を、その身に受けてくれるって!」

「もちろんだ婿殿」

「儂も覚悟はできておるのう」


 セシリアもウィブも悟ったように穏やかな顔になっている。


「まさかそんな……そ、それならとっとと逃げなきゃ……あれっ!?」


 ガウスは翼を動かして飛び立とうとするが、浮かび上がらない。

 ドラゴンが言う通りにしなくてガウスは驚く。


「当然だろう。なにせお前は俺の仲間を取り込んでいる(・・・・・・・)んだからな!」

「にゃ、にゃにぃ!!」


 慌てふためくガウスは、ドラゴンの翼をばたつかせ手足を動かしているが、空中には飛び出せないままでいた。


「肉体は捕らわれていてもその精神はお前の好きにさせんぞ」

「ぐ、ぐぬぬ……」

「所詮アンデッドになったドラゴンの肉体だ。俺の仲間が取り込まれたのではなく、乗っ取られたって事だな!」


 ガウスの乗っていたドラゴンが大きく身体を揺する。


「おわぁっ!」


 振り払われる格好になってガウスがドラゴンから落ちてきた。


「あいつらは後でどうにかするとして、もう逃げられないし使える素材も残っていないぞ、ガウス」

「ひ、ひぃ……」


 何度目だろう。怯えた視線を投げるガウス。今回は間髪入れずに結着させる。


「ドラゴンの制御はセシリアたちが握っている。ガウス、お前を救う者は誰もいない。もちろんお前の抵抗もここまでだな」

「う……」

「ここまで戦った相手だ、敬意を示そう。どれ、死ぬ前に言いたい事があったら聞くぞ」

「ふ……」

「なさそうだな」


 俺は振り上げた剣をガウスに向かって振り下ろす。


「ディ、解呪ディスペル


 俺の放った剣撃はガウスの目の前で消失した。


「まだあらがうか」

「ち、違う……アタクシはもうこの世界で身を滅ぼした」

「ん?」

「この世界へ来るために、そしてこの世界で今の地位を築くために……リアルな世界でもう身を滅ぼしているんだ」


 リアルな世界。異世界の話は俺に理解できないものだ。


「だが興味はあるな。それでガウス、お前は異世界……ここから見て異世界だが、そこでは既に滅んでいるという事か?」

「う、ああ。そうだよ。アタクシはもう滅んでいる。ネトゲ廃人という奴さ」

「ねとげはいじん?」

「ははっ、お前らには判らないだろうが、ある意味アタクシは終わっている存在、なのだよ」


 異世界では既に終わっているというガウス。

 その目には諦めでもなく媚びでもなく、なにか信念のようなものが映っていた。

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