戦う覚悟
巨大。なによりも巨大で、頭の先は霞んで見えるくらいの大きさだ。
その一個体が俺たちを踏みつけようと襲ってくる。
「逃げるにしてもこの距離を移動するのは難しいな。どう考えても足の裏だけで一キロメートルは優に超える」
「どうするの、ゼロ」
俺におぶさったままのルシルが軽く聞いてきた。こいつはたいした心配もしていないのか、悟っているのか。これくらいの事では物怖じしない。
そう、これくらいの事では。
「こうなったら覚悟を決めるしかないな」
「正面から戦うの?」
「そうだ!!」
俺は踏みつけにかかるドラゴンの足に向かって剣を突きつける。
「SSSランクスキル発動! 重爆斬! これでも食らえッ!!」
俺の放った剣撃が足の裏に向かう。
「魔力の放出ならアタクシには届かないよ!? 解呪!」
「そうだろうな、そう思っていたぞ! SSSランクスキル発動! 重爆斬! もう一度だっ!!」
「抵抗する事すら意味が無いって判らないかなあ。解呪!」
またしてもガウスに消されてしまった。
「まだまだっ! SSSランクスキル発動! 重爆斬!」
「しつこいなあ。お前の魔力だって無尽蔵じゃないだろう? でもアタクシの力は基礎能力、いくらでも使えるんだよ? 解呪。それに、踏み潰されるまでにそれ程時間はかからないからねえ」
ガウスの言う事はもっともだ。それは俺も理解している。
「言ってろ! SSSランクスキル発動! 重爆斬!」
「無駄だって、解呪」
「重爆斬! 重爆斬! 重爆斬!!」
「なっ、ちょ、解呪、解呪……のわっ!!」
俺のスキルを打ち消すためにガウスも躍起にならざるを得ない。俺が攻撃するたびに対処しなくてはならないからだ。
「だとすると、な。ルシル!」
「うんっ! SSSランクスキル地獄の骸爆!」
俺の重爆斬連発に合わせてルシルもスキルを発動させる。
「なっ、クソッ!」
ルシルの放った爆炎が巨大ドラゴンの足に直撃した。
「ディ、解呪!」
「遅いっ!! 重爆斬!!」
「ぐぎゃぁ!!」
俺の剣撃とルシルの爆炎がドラゴンの足を襲う。
ガウスの解呪が追いつかなくなった所で攻撃が通るようになる。
「あ、足が!」
最高級の攻撃スキルを連続で受けているのだ。どれだけ大きかろうがどれだけ強かろうが、いつまでも無敵ではあり得ない。
「足がもげたぁ!!」
ドラゴンの左足を剣撃と爆炎が破壊する。その威力は凄まじく、足の裏からの攻撃がドラゴンの膝にまで及んだ。
膝から下が吹き飛ばされて超巨大な白龍が横転する。
「ぐわぁぁ!」
倒れた勢いで地面の雲が煙のように吹き飛ばされた。
その姿は山のようにも思えるくらいの大きさだ。
「く、くそう、まさか解呪が追いつかないとは……」
「当然だろ、俺たちは一人で戦っているんじゃないからな。それに、底はあるとはいえ俺たちの魔力量、見くびるなよ」
「ひ、ひぃっ!」
次々と放つ攻撃に、ガウスのくっついているドラゴンの身体が崩れていく。
「だが、この大きさだからなあ」
「ちょっと大変だね」
半ば作業と化している俺たちの攻撃で、徐々にではあるがドラゴンが分解されていった。