寄せ集めバ美肉
バラバラになっている身体を精神力でつなぎ止めているガウス。
「く、くそっ!」
「頑張ってはいるようだが、俺たちとお前の差は歴然。到底あらがえないのだ、もう諦めろ」
「そ、そんな……アタクシは、まだ……ぼぎゃぁ!!」
無駄口を叩いているガウスにルシルが炎を投げつける。
全身を赤い衣装に包まれたようなガウスがのたうち回って苦しむ。
「ぎゃぁ! 燃えるぅ! 焼けるぅ!!」
「切っても駄目なら燃やして粉々にする。灰になるまでな」
「ぎゃあ!!」
燃えながらうずくまるガウス。
小さく丸まったその姿は、抵抗すらできなくなったようにも見えた。
「……なぁんてなぁ。クックック……これだからノンプレイヤーキャラクターは底が浅いという物だよ。所詮はバイラマたちが造った世界、神が設計できない進化はたどれないというべきか」
「なんだ、こいつまだ動けるのか!?」
「いや、この器はもう動けない」
ガウスの返事はあっさりしている。
「だがな、器となる物はたくさん転がっているからなぁ!!」
「たくさん? まさか!」
俺は近くにある白い連中の死体に火を付けた。
「ルシル! 死体だ! 奴は死体に移るつもりだ! セシリア! ウィブ! 敵の死体を切り刻めっ! 少しでも復活を阻止するんだ!!」
指示を出しながらも俺は転がっている死体を燃やし続ける。
「遅いっ! 肉はそこかしこに転がっている!! そいつらをかき集めれば受肉には十分っ!!」
「くっ!」
ガウスの元に死体が引き寄せられていく。身体の部分部分が集まり、付着し、合成される。
「はい、新しい身体のできあがり~」
俺の目の前には一糸まとわず己の新しい身体をしげしげと眺めるガウスが立っていた。
その身体は美少女と言っていい均整の取れた顔立ちに、すらりとした肢体。だが、細身の身体に似つかない程の大きな胸が付いていた。
「ちょっと大きくしすぎちゃったかな? でも、つなぎ目は……」
身体の至る所に継ぎ目が見える。
「まあ、フレッシュゴーレムを受肉体としたんだからしょうがないか。これは今度キレイな身体の娘をNPCで造ってその皮を使えばいいかな?」
ガウスは右手を開いたり握ったりして動きを確かめた。
「うん、いいね。バーチャル美少女に受肉した気分は! アハハハッ!!」
ガウスが大きな胸を揺らして間合いを詰める。
「セシリアっ!」
セシリアが剣を構えているが、その周りを瞬時に迂回するガウス。
「背後を取られたっ!?」
「遅いよあんた」
セシリアの背中をガウスの手刀が切り裂く。
「な、なんて速さだ……」
そのままうつ伏せに倒れるセシリア。ガウスはもうセシリアが戦えないと見てウィブへと突進する。
「飛べっ! 回避しろっ!」
「う、うむっ!!」
ウィブが羽を広げて浮かび上がるが、それに追いつくようにガウスがジャンプした。
「そぉれっ!!」
ガウスの手刀がウィブの翼を切り裂く。ボロボロになった翼膜では空気をとらえられない。
飛ぶ事ができなくなったウィブはきりもみ状態で地面に激突した。
「あーっはっはっは! いいね受肉! いいねえ肉体は!!」
「このヤロウ……」
俺がガウスに攻めかかろうとしても、奴は俺に構わずルシルへと駆け寄った。
「ルシルっ!」
「なにこいつ、速いっ!」
ガウスの手刀を杖で受け流すルシル。だがガウスの付かず離れずの動きに翻弄されてしまう。
「引き寄せ、突き放すのはアタクシの得意技! 瞬時にSとNを切り替えるみたいな、ね!」
ガウスが腕を伸ばして交差させると、俺とルシルが不思議な力に引き寄せられて衝突してしまう。
「な、なんだこの力!」
「とんでもなく強い力で引っ張られるような……」
俺にくっついたまま、ルシルの身体が離れない。
「この不思議な力をどうにかしないと」
俺はルシルを抱きかかえるようにして、どうにか立っていた。