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白い半球を崩壊させた先に

 一面を覆う白の世界。文字通り雲の上の天界に、白と真逆の色が増えていく。


「なんだこいつら! たった三人とワイバーンなのに!!」

「色付きが調子に乗りやがって!!」

「囲め! 空中を使えっ!!」


 俺たちを囲む連中は雲の上に立っていたが、自前の羽を使って空に飛び出す奴らも出てきた。

 どこもかしこも白い奴がうようよいる。距離を保って浮遊する連中を外から見たら、きっと白い半球に見えた事だろう。


「上から狙おうとしても効果あるかな? 別に俺たちは空を飛ぶ相手にだって……Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! 攻撃する術は持っているんだぜ!」


 俺の放った炎が帯となって渦を巻く。

 巻き込まれるように空へ飛んでいた白い連中が炎に飲まれた。


「くっ、撃てっ! 撃ち貫けっ!!」

「放てぇっ!」


 白の連中が弓や手槍で攻撃してくるが、その程度ではセシリアの剣技を突破できない。

 ウィブが長い尻尾を振り回し連中を跳ね飛ばせば、ルシルは杖から氷の粒を無数に撃ち出して飛んでいる奴らを落としていく。


「強すぎる、なんだこの強さは……」

「昔話に出てきた鬼神そのものだ……いや、あの女の頭!」


 奴らはルシルの額にある一対の角を見る。


「鬼だ……破壊の鬼だ!」


 そう叫んだ奴は次の瞬間氷の刃でズタズタにされていた。

 悲鳴を上げる奴らの奥から、のんびりと、だが天界にありながら地の底を這うような深い声が響く。


「燃えたり斬られたり潰されたり。白一色の美しい世界が穢されていくであるな」


 その声にハッとする白い連中。


「ガウス様……」

「おお……」


 にわかに連中が戦意を取り戻していく。先程までの慌てぶりが嘘のようだ。


「お前たちよく戦ったのであるな」


 白い連中の波をかき分け俺たちの前に出てきたのは、鏡のように光りを跳ね返す銀のフルプレートの男だった。


「ガウス様!」

「ガウス様が到着なされた!」

「アバターでもその強さは一騎当千と言われたガウス様!」


 どよめきが高揚に変わっていく。心なしか俺たちへの攻撃にも気合いが入っているようで、少しばかり攻撃の間隔が狭まってきている。


「Rランクスキル発動、岩の板壁(ストーンウォール)! 飛んでくる矢はこれで防ぐ!」


 俺は目の前に岩壁を造りだし防御を固めた。相手の攻撃が激しくなり、全方位への防御が難しくなってきたからだ。


「無駄であるな、解呪ディスペル!」

「なっ!?」


 俺の造った岩壁が粉のように崩れ去っていく。


「効かんであるな、アタクシには」


 フルプレートメイルの中から漏れ出す低音。


「そなたらは天使たちを軽く屠ったと思っておるな? しかしなあ、アタクシは彼らの千倍も万倍も強いのであるな」

「ほう、面白いじゃないか。それだけ言うのであれば俺と剣を合わせてみるか?」

「来ても構わぬのであるな」

「言うね」


 俺は超覚醒剣グラディエイトに魔力を注入する。その圧倒的な魔力量で周りにいる白い奴らが弾け飛んでいく。


「この一撃を食らってもまだその減らず口が叩けるかな?」

「ホッホッホ、それは負けフラグと言うのであるな」

「なに訳の判らない事を!」


 相手との距離は五メートル程か。

 俺は構えた剣を振り下ろす。当然それは奴には届かない距離だが。


「Sランクスキル発動、超加速走駆ランブースト! 間合いを詰めるっ!」

「ほう! 面白い術を使うのであるな!」


 一気に距離が縮まった所で俺の剣が奴の肩に触れる。


解呪ディスペル!」

「なにっ!」


 俺の剣が奴の肩に当たったが、ツルツルの鎧を滑るように流れて地面の雲に当たった。


「ルシルちゃん、どういう事なんだ!?」

「セシリア、あいつがさっきやったやつ見たでしょ」

「ああ、婿殿が造った岩壁を一瞬で粉にした……」

「それと同じよ。ゼロが溜めた魔力を、奴が解除したのよ」

「そんな事が!?」


 セシリアが驚くのも無理はない。俺だって同じように驚いているのだから。


「剣が……」

「それでは魔力を帯びていないただの金属片であるな」

「な、なんていう事だ……」


 俺は剣を取り落としそうになって慌てて鞘に納める。


「ホッホッホ、抜刀術でも見せてくれるのであるな?」

「いや、俺が剣を納めたのは違う目的だ」

「それでは先程も見せていた炎でも使ってみるのであるな?」

「いいや」


 思いっきり握りしめた右手をゴチャゴチャ抜かす奴の横っ面に叩き込んだ。


「ぼぐびゃらっ!」

「ガウス様!」


 顔面を殴られて吹き飛んだ奴に周りの連中が集まって介抱する。


「剣も魔力も通じないなら、拳で語ればいい」


 兜が脱げて顔があらわになったガウスは、ひしゃげた頬を押さえて俺の事をにらんでいた。

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