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色付きの奴

 耳の奥が少し痛む。


「これは、おい! みんな気を付けろ!」


 俺が注意をうながしたと同時に剣を抜いて構える。

 その構えた剣に固い物が当たって火花を散らした。


「ほう、よくこの奇襲を受け止めたな」


 俺が受け止めた矢が雲の地面に音もなく落ちる。

 うっすらとだが羽の生えた白い人間が見えて、そいつの持つ弓から放たれたのだろう。


敵感知センスエネミーが発動していたんでな、俺に向けられた敵意がお前の存在を知らせてくれた」

「ほーう、それは便利なものだ。という事は、我らが異物を排除するために参集したは理解しておろうなあ?」

「ああ、さっきから殺気がすげえぜ」


 白の中で判らなかったが、よく見れば辺りは羽の生えた白い人間でいっぱいだ。


「ちっ、俺も焼きが回ったか……」


 目が慣れていないとはいえここまで集まってきているのに気が付かないとはな。


「ゼロ~、囲まれているよ」

「本当だのう、雲かと思うたが羽の人だったのう」


 のんきな口調のルシルにウィブも加わって、俺の怒気も消えてしまいそうだった。


「そうだなあ、完全に包囲されている。数だけならたいしたものだよ」


 逆に冷静を取り戻した俺を見てルシルがにやりと笑う。


「セシリア、俺と近接を頼む! ルシル、ウィブの背に乗ったまま援護だ!」


 俺の指示にセシリアがウィブの背中から飛び降りる。ウィブが翼を広げ、背中に乗ったままのルシルが銀枝の杖を振りかざした。


「ゼロ、了解!」

「承知した婿殿!」

「判ったのう」


 三者三様応答し、戦闘態勢を整える。


「でもさゼロ、相手……見にくいよ?」

「うーん、確かに見にくいな」


 俺たちの会話を聞いて白い連中がどよめく。


「なんだと、我らが醜いとな!?」

「こんなにも美しく清浄な我らを侮辱するとか、死をも恐れぬ不届き者め!」


 なんだこいつら、勝手に意味を勘違いしているんじゃないか?

 俺たちは白い風景に全身白い人間たちで見分けが付かないっていう事を言ったつもりだったが……。


「まあいい、どっちのみにくいでも関係ない。Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! さあ炎の衣をまとってその姿を俺たちに見せろっ!」


 俺の放った炎の嵐が吹き荒れ、衣服に燃え移った白い連中の姿がよく見えるようになる。


「これでお前たちにも色が付いたぞ。どうだ、見やすくなったろう?」

「ぐぎゃぁ! 熱い! 熱いぃぃ!!」

「話は聞いちゃいないか。炎が効いているからな」


 焼け焦げていく白い連中、もう白くはなくて火傷で赤黒くなっている羽の生えた人間が数人倒れていく。


「ええい、怯むなっ! 一斉に矢を打ち込めっ! 数では我らが圧倒的に有利! おじけずに戦えっ!!」

「おおっ!」

「放てぇ!」


 白い連中が構えていた矢を一斉に発射させる。


「そりゃっ!」


 セシリアが剣で飛んでくる矢を叩き落とした。


「なんっ!?」


 白い連中が、多分目を見開いて驚いているんだろう。白くてよく判らないが。


「冥界を通って長い時間を旅してきたんだ、これくらい見切るのは簡単だぞ」


 セシリアは剣を振るって矢を弾き飛ばしていく。


「そ、それならあっちのデカブツを狙えっ!」


 だが、ウィブに向けられた矢はワイバーンの硬い鱗に当たって弾かれた。


「儂の鱗は千年以上も鍛えたものだからのう、そんな軽い矢で生み出されるのは傷ではのうて弾かれる音だけだのう、はっはっは!」


 固い金属音はするがウィブの鱗を突き抜ける矢はないようだ。


「大口を叩いているのも今の内よ! 正面部隊、あの口を狙えっ!」

「おうっ!」


 ウィブのしゃべっているその口に矢が放たれる。


「こしゃくなっ!」


 飛んできた矢はウィブの鋭い牙で噛み砕かれた。


「甘いのう若造めら」


 硬い鱗に覆われた顔が笑ったかのように見えたその上から青白い光が見える。


「Nランクスキル、雷の矢(ライトニングアロー)!」


 ルシルの放った電撃の矢が敵の身体を貫通していく。白い連中の矢とは違ってこちらの攻撃は効果的だ。


「な、なんだこいつら……」

「強い……」


 白い連中から戦意が失われていくのもすぐだろう。

 俺はもう一度剣を構えて、握る手に力を込めた。

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