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未来の仲間たちとの合流

 俺は重たい身体を引きずるようにしながら草原の中に建てられた小屋に案内される。

 この小屋は細い柱を組み上げて外側を布で覆っただけの物で、携帯や移動に適している天幕とも言えた。


「ガンゾの天幕っぽいな」

「そうね、彼らから技法を教わって造ったの」

「へぇ、それは凄い」


 俺は工作クラフトのスキルを持っていたがここまで上手く造れなかったし、自分なりに改善しつつ建てられるなんて器用なものだ。


「この天幕はシルヴィアさんが造ったのよ」


 ルシルに説明されてシルヴィアの顔が赤くなる。

 シルヴィアは天幕の脇で小さな椅子に座っていた。俺はルシルに肩を借りて天幕の中央に敷いている絨毯に座っている。


「そう照れなくてもいいのに。ゼロが戻ってくるまでに安全な場所へって移動しながら待っていたんだから」

「移動しながらか。それは苦労かけたな」


 俺がねぎらいの言葉をかけると、シルヴィアは照れながらも嬉しそうに笑った。

 はにかんだ顔が俺の心労もとろけさせる。


「そう言ってもらえると嬉しいですゼロさん」

「実際助かったよ。俺の思念体が戻ってきても、この身体がなかったらこうして話もできなかっただろうからな」

「はい、ご無事でなによりでした」


 シルヴィアの包み込むような優しげな笑顔が俺に向けられた。無償で無制限、見返りを求めない愛と信頼が感じられる。俺の気のせいでなければ、だが。


「それで、戦況を知りたいんだが。各所に王たちが散っている事は今しがた聞いたが、あいつらがうまくやっているかが心配でな」

「ゼロが言う通りかも。みんな自分たちの国だった場所に行って国の復興を始めているけど、あのホワイトドラゴンたちが襲ってきたら……」


 ルシルが状況を説明してくれている所で天幕に誰かが入ってきた。

 俺は入り口が見えるように身体をねじる。

 そこで目に入ったのが天幕の外から入る光を受けて見事に輝く金色の長髪。


「貴様、戻ってきたのか!」


 そこにはガンゾ辺境伯の娘、アカシャが立っていた。


「一時は死体のように動かなくなって心配したんだが、それも杞憂だったようだな」

「相変わらず手厳しいなアカシャ」

「なあに、自分を心配させた分安心させてもらわなければならんぞ」

「別に俺はお前に心配してくれなんて頼んだ覚えはないがな」

「そう言っていられるのも今の内だぞ」


 アカシャはまだ力の入らない俺の腹につま先で蹴りを入れる。


「ぐふっ! ちょっ、お前なにしてくれんだよ……」


 息を整えながら文句だけは言っておく。

 だがアカシャは別段気にする様子はなかった。


「貴様らがいない間に天界の者と名乗る奴が自分らの国に攻め入ってきたんだぞ」

「それは俺のせいじゃないだろ! それに今生きているって事はどうにか対処できたんだよな?」

「ああ、一応はな。だが自分らも天界の奴らを追い返すまではいかなくてな」

「そうなのか……。この天幕は白龍どもに攻められた痕跡もなかった。となると、攻められていないのではなくて、攻撃を受けないように上手く回避していた、と?」

「その通りだよ」


 アカシャは入り口近くの椅子に腰掛け、そこで大きなため息をする。


「それで、白龍どもは今どこを攻めているか判るか?」


 俺の問いが問題の解決につながればいいが。俺の中で少しずつ不安の種が芽吹き始めていた。

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