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心身合一

「はぁ……」


 大きなため息を一つ。それが俺の始まりだった。


「ゼロ?」

「ああ」


 まだ口の動きがおぼつかない。


「どう?」

「うん……なんだか赤ん坊になった気分だよ」


 目を開けるとそこにはルシルの顔が見えた。俺を覗き込んでくる顔。


「膝枕、してもらっていたのか」


 周りの様子は俺の見知った地上の世界。

 俺は乙凪おとなに冥界へ飛ばされた。それが地上界での最後の記憶だ。


「なんだか久しぶりな気がするね」


 ルシルの顔越しに見えるのは青い空。風に乗る草の匂い。

 日差しは俺を照らすがそのぬくもりは感じられなかった。SSSランクの常時発動スキル、温度変化無効が効いているのかそれとも俺の感覚がまだ戻っていないのかは判らないが、竜神の鱗を咥えずとも呼吸はできるのは地上だからだ。


「久しぶり……ああ、長い事こんなにのんびりとした時間は過ごして……あれ?」


 俺とルシルを取り囲む人たちが見える。

 シルヴィアやセシリアたちが俺たちの事を見ていた。


「お、おおっ、おわっ!?」


 俺は慌てて起き上がろうとしたが上手く身体を起こす事ができず、首を持ち上げてルシルの下乳に顔をぶつけてしまった。


「す、すまん」

「いいよいいよ」


 慌てる俺に優しくかがみ込むルシル。

 ルシルの胸が俺の頭に乗っかって、頭が胸と膝で挟まれる状態だ。


「なあ婿殿、そのままで聞いてくれ」


 俺の顔がルシルの胸を感じている状態でセシリアが冷静な声で話しかける。


「既にトリンプ王たちは自国の土地へと向かっている。ガンゾ辺境伯とかと連携を取りながらな」

「そうか、この時代の人間たちとも既に接触しているんだな」


 俺はルシルの胸に押されてモガモガしながら返事をした。


「天界から来る白い奴らは撃退できているが、あのホワイトドラゴンどもが現れていないからな、まだなんとかしのげているという状況だ」

「そうか。よし、俺が自分の身体に戻ったからには……いてて」


 身体に力が入らない。それこそ魂が抜けるような違和感を覚える。


「ゼロ、無理しないで。私も戻ったばかりの時はそうだったから」

「ど、どうだった?」

「力の入れ方が解らない、というか身体の動かし方に馴染んでいないというか、思い通りに動かなかったの」

「そうか……長い事肉体と精神が離れていたからな、その影響が出ているのかも知れない」

「だからゆっくりして。身も心も一つになるまで」

「お、おう」


 ルシルの言い方が妙になまめかしい気もするが、きっと考えすぎだろう。


「セシリア、こんな状態で済まないが、今の状況を教えてくれ」

「判った。他にもララバイたちマルガリータ王国の連中も自国の立て直しに向かっている。なにかあれば思念伝達テレパスで連絡を取るようにしているからな」

「そうか。他の連中たちも無事か?」

「ああ大丈夫だ。ドッシュたちヒルジャイアントも一緒に移ってきたからな、戦力としてはそこそこ期待ができるし、精霊界のロイヤたちに工作クラフト系のスキルを教えてもらったからな、対空防御も可能な要塞造りに着手しているぞ」

「おお。それはすごい!」


 頼もしいし、期待もできる。

 敵の戦力が今の時代でどれくらいかは判らないが、白龍たちの攻撃がどういうものか、過去で体験した記憶は無駄じゃない。


「いいぞ、早く俺も身体を動かせるようにするから、そうなったら天界へ乗り込むぞ」

「その意気だ。期待しているぞ、婿殿」


 セシリアは俺の足を蹴っ飛ばしながら活を入れてくれた。

 やっぱりルシルの膝枕の事、怒っているみたいだ。

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