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塩に対抗する畑造りで未来へ

 村の外へ行けば土地はたくさん確保できた。人がそれほど住んでいないだけあって土地は好きにできるようだ。鉱山にさえ手を出さなければだが。

 その制限下でも今回やろうとしている畑作りには十分な広さはある。


 ルシルとカインが見渡す限りの荒野を見て感想を述べる。


「とはいっても荒れていて作物を育てる環境じゃないよね」

「そうだね、ルシルちゃん」


 カインはまだ昼間だから普通の男の子の姿だ。夜になって次の光を浴びると、カインは猫耳娘の姿になってしまうから、村の人たちを驚かせないよう外に出る活動は昼だけにしようと事前に話し合っていた。


「ゼロさん、山の方に続いている岩塩を採る鉱山は整備されていますね。道も綺麗です」


 シルヴィアが辺りの地理を確認する。


「そこが命綱だからな。流石にしっかりとしているようだ」


 岩塩はまだまだ枯渇しそうになく掘っても掘ってもどんどん出てくるらしい。それが生活の糧となっているだけあって採掘できる事は村にとっていい話なのだが。


「それだけに土にも水にも塩分が多量に含まれているという所が問題なのだがな」


 俺は荷馬車に積んだ道具類を並べる。土を掘るのに使うスコップやこねて固めて煉瓦にするための木枠などだ。


「さてと、先ずは湯船を造った物と同じように穴を掘るぞ。周りから土や水が入ってこないように少し周りを土の山で囲うんだ」


 俺の掛け声で土地の開発が始まる。前の露天風呂開発でNクラス工作クラフトスキルを覚えた俺が主導した。開発には村の人たちも少なからず手伝ってくれている。

 広めに穴を掘り内側に焼いて作った煉瓦を敷き詰め、こねた泥で隙間を埋める。最後に枝や藁を穴の中で燃やして灰を塗り込めた。火にかけられる事で土や煉瓦が固まっていき、炭をすり込んでいく事で水を弾くようになるのだ。


「ようし、これで塩が外部から入ってくる事はない。そうなると問題なのは中に入れる土なのだが、ここでアイスプラントの種を使う」


 俺たちが持ってきたアイスプラントとは、水や土壌に含まれる塩分を吸収して葉の表面に貯める事ができる植物だ。


「後は塩分を含まない水を作る事だが、この辺りの強い日差しを使おう」


 俺は穴を掘ってそこに井戸から汲み上げた水を注ぐ。飲み水としてはどうにか耐えられる塩分濃度のようだが、植物の育成には濃すぎるらしい。

 穴の中央には受け皿として樽を置いておく。

 穴を水を弾く布で塞ぐ。中央にくぼみができるように石を置けば、日の光で熱せられた水が水蒸気になって布の内側に付着し、それが中央のくぼみに集まっていく。しずくとなって樽に溜まる水は、塩分を含まない水になる。


「ただこれは時間がかかるからな、初めだけは俺が何とかしよう。水生成クリエイト・ウォーター!」


 俺の手から魔力によって作られた水が放出される。溜まっていった水は別に造っておいた溜め池に流す。


「常に魔法で作っていく訳にもいかないからな、後はこの穴と布を使って水を溜めていくようにするのだ。溜め池には雨も集めておければいいな」


 俺は村人たちに説明しつつ、皆で穴を掘ったり煉瓦を焼いたりする。


「これが一通りできるようになれば、村の人間たちだけでも畑を作っていけるかもしれないぞ。土の塩分が少なくなれば他の野菜を作付けできるようになるだろう」


 その言葉に村人たちから歓声が上がる。


「ん? どうした」


 村人たちの中から喜びとは違うざわめきが発生した。


「エッチョゴ、あんたのやり口は認めないわ!」


 奥から出てきたのは俺と同じくらいの歳の女の子。鉱夫の服装をして厚手の手袋をはめている。そのゴツゴツとした手袋の指が俺の方を向いていた。

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