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諦めさせるにはすり替え大作戦

 地下迷宮を水没させた事で、森の一部は湿地帯のようになってしまった。

 至る所で水浸しの状態だ。


「靴の中までぐじょぐじょだよ……」


 ホイトは泥だらけになった身体になったせいで真っ白ではない少年になっている。


「わはは、本当だね!」


 メイも泥で汚れてはいるものの、それを嫌がってはいないようだ。


「また住む所がなくなってしまったな」

「いやいや、お前が自分で潰したんだろうが勇者ゼロ」


 俺のつぶやきにホイトが突っ込みを入れた。


「なんだホイト、相変わらず子供のくせに偉そうな事を言うなあ!」


 俺はホイトの頭を握りこぶしでグリグリと挟み込んでやる。


「いだだだだ!」

「ちょっとゼロちゃん、まだホイトちゃんはお子ちゃまなんだから手加減してやりなさいよ」


 アラク姐さんが俺の手を押さえてホイトへのグリグリ攻撃をやめさせた。ここまでが一連のスキンシップだ。

 それを知っているからメイが困ったような顔をしながらも笑いをこらえるのに必死という図式が成り立つ。


「もう、牡鹿もホイトも兄弟みたいだねぇ」

「いやどこがだよ!?」

「まったくだ!!」


 俺もホイトも全力で否定する。


「地下水の深い所から崩しちゃったからねえ、身体を洗うにもキレイな水が出てこないよ。まあ、アラク姐さんとしてはそんなに水の汚れ具合なんて気にしないんだけどさ」


 アラク姐さんが自分の身体をこすると、土で汚れている部分がポロポロと落ちていく。


「ほらね、こうやってキレイにできるからさ」

「それはアラク姐さんだからだよ」

「あー、ゼロちゃん! それは蜘蛛差別だぞ! 聞き捨てならないなあ!」


 そう言いながらもアラク姐さんは俺に抱きついてくる。


「ほらほら~、アラク姐さんの汚れを付けちゃうぞ~!」

「や、ちょ、やめなって! 俺は思念体だから汚れは付かないの! だからこすりつけてもだーめ!」

「またまた~、ほら、意識すると汚れが浮き出てくるでしょ~」

「意識って……いや、俺汚れた自分なんて想像しないから!」

「そんな事言って~、身も心もけがしてあげちゃうぞ~」

「やめってば!」


 押し付けるアラク姐さんの身体は背中から生えている蜘蛛の脚以外はスタイルのいい女性のものだ。

 その肉感的な身体を俺に押しつけてくる。

 俺は身体を透明化してアラク姐さんの抱きしめ攻撃をすり抜けさせた。


「あら、つれないねえ」

「小さい子供も見ているんだからやめなさい!」

「そんな恥ずかしがっちゃって。じゃあ二人きりになったらアラク姐さんの緊縛技で楽しみましょうね~」

「しないっての!」


 俺はあえて強めに拒否してみる。それでもアラク姐さんは俺の事をからかうのだ。


「まったく、メイたちはこんな大人になっちゃ駄目だぞー」

「でも二人とも楽しそうだよ?」

「そんな事はないぞメイ。大人にはな、社交辞令というのがあってだな……」


 俺は言いかけていた話を途中で止める。


「どうしたの牡鹿?」


 メイが不思議そうに俺の顔を覗き込む。俺は神経を尖らせて気配を探る。


「ゼロちゃん、アラク姐さんのうぶ毛がチクチクするよ」

「ああ、この気配……白龍たち、ホワイトドラゴンだ」


 俺の言葉にホイトが身をこわばらせた。


「か、数は……どれくらいなんだ!?」

「慌てるなホイト。俺たちはお前を突き出したりはしないから安心しろ」

「う……」

「それよりも、だ。Rランクスキル発動、岩の板壁(ストーンウォール)。岩壁で俺たちを囲むぞ」


 俺は周囲に泥を被った岩の壁を作りだして隠れる場所を作る。


「それと……」


 少し開けた所に俺とメイの姿を作り出す。


「え!? ゼロちゃんどうやったの!?」


 アラク姐さんが驚いて俺の作った人形を見る。


「俺は思念体だが物質化もできるからな、俺たちの姿を想像して作ったんだよ」

「そんな事までできるのね……。あんたって凄いを通り越して人間にしておくにはもったいないわよね」

「そりゃあどうも」

「で、あの人形でどうするの?」

「それをだな、こう……」


 俺は頭の中で念じて人形を動かす。

 俺とメイが岩に座って休憩をしているように見せた。


「こうやって白龍たちを騙すんだよ」

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