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水先案内人

 どうやらこの森にも天界の連中が入り込んできた。


「メイはあのトカゲ人間を見たことがあったか?」

「ううん、初めて見たよ」


 メイは蜥蜴人間リザードマンを見た事がない。野生と言ってはなんだが、蜥蜴人間リザードマンたちは余程の事がない限りどこでも居住可能で、森にも村を作っている例がある。

 だが、メイが知らないという事は、この辺りには蜥蜴人間リザードマンがいなかったと考えるのが普通だろう。


蜥蜴人間リザードマンと言っても、こいつは天界の連中だって事だから、元々森には住んでいなかっただろうがな」


 俺は首を刎ねた蜥蜴人間リザードマンを見る。

 全身真っ白なだけに、切った断面と口から出ている血の赤さが余計に目立つ。


「偵察任務も担っていたとすれば厄介だが……」


 俺は地面に手を当てる。


「Sランクスキル発動、凍晶柱の撃弾(フリーズバースト)。氷の弾よ地面をえぐれ」


 出力を調整した氷の爆発を地面に叩き付けた。

 そうしてえぐれた場所に蜥蜴人間リザードマンを突き落とし、周りから土を被せる。


「ほえー、なにやってるの?」

「すぐに見つかるかもしれないが、放置しておくよりはマシかと思ってな」

「へぇ~」


 メイは素直に感心した様子で俺の事を見ていた。


「それはそうと、ホイトと言ったか」

「う、うん……」


 俺は怖がって縮こまっている白い少年を見る。


「天界から逃げてきたんだって?」


 ホイトは不安そうな目をしながら、小さくうなずいた。


「脱走兵は死罪か」


 ホイトが振るえているのはよく判る。実際に自分へ向けられた殺意に恐怖を感じたのだろう。


「俺としては知るよしもないが、なぜ天界から逃げてきたのかを教えてくれるか?」

「そうね、なにがあったのかな」


 俺もメイもホイトの考えや思っている事が気になる。

 このまま捨て置いてしまえば気にする必要もないのだが。


「ボ、ボク……」


 ホイトは言い淀む。


「言いたくなければそれでもいいが、だが俺たちは少なくとも一緒にはいられない。一応俺は天界から命……というか、まあ、狙われている状況だからな。それにこの女の子も地上界の人間だ。放っておいたら天界の連中になにをされるか判らない」


 俺の話を聞くたびにホイトは身をすくめてビクビクしている。


「だからまあ、お前が天界の息がかかった奴かもしれないのなら、危険は避けたい」

「う……」


 正直、ホイトが天界の間者だとしても恐れる事はないと思うが、それでも可能性の問題だ。白龍とかを呼び寄せられると面倒だ。


「あの、ボク、天界軍から脱走したのは、本当です……」


 蜥蜴人間リザードマンを捨て駒にするでもなければ、敵対していたのは信じてもいい。

 だいたい俺たちに対してそこまで策を巡らせる必要もないだろうからな。


「そうか。では天界軍の話を聞かせてもらってもいいか? 俺たちと一緒に逃げるのなら、俺も情報が欲しい」

「う、うん……。天界軍はね、使者と龍族の二つの勢力があるの」

「使者はお前たち羽のある人種か? 龍族は白龍や蜥蜴人間リザードマンみたいな奴かな」

「そう。天主様の命を受けて、使者が龍族を使役するんだ」

蜥蜴人間リザードマンの奴が上流種族と言っていたのが使者」


 ホイトがうなずく。


「なるほど、だいたい構図が見えてきた」


 俺はメイの方を見る。メイはもう落ち着きを取り戻していて、埋めた蜥蜴人間リザードマンの辺りを踏みしめていた。


「メイ、お前はどうする?」

「うーん、喉が渇いたかな」

「自由だなお前」


 メイが固めた土の上に草を散らして埋めた所を判りにくくしてくれる。


「あの……水場、この近くに……」


 ホイトが話に入ってきた。


「そう言えば水の事を教えてくれるって話だったな」

「うん、もう少ししたら」


 ホイトは森の奥を指さす。


「あ」


 メイがびっくりしたような声を上げた。


「どうしたメイ」

「あの辺り、昔オジバが教えてくれた。湧き水があるって」

「ほう」


 二人の内容が合致するのであれば、水場は確かにありそうだ。

 俺たちはホイトの案内で水場に向かって歩き出した。

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