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全部が同時に

 全ての事象が意識に流れ込んでくる。目の前に戦っているのは遠隔地の各拠点。


「ゼロさん、来てくれたんですね!」


 ララバイが俺の姿を見つけて駆け寄ってくる。ララバイが治めるマルガリータ王国に俺の意識の一つが飛んでいる。


「ララバイ、皆はどうか!?」

「事前に話は聞いていましたからどうにか備えはできましたが」

「冥界の扉はどこに開いている!?」

「あちらです!」


 ララバイが示す方向には黒い空間の歪みが生じていて、おぼろげだがその向こうにシルヴィアたちの姿が見えた。


「民は進み始めているのですが、天界の連中が襲ってきまして。兵たちの防衛も空中からの攻撃には有効な手立てが見つからず……」


 空には数匹の白龍が飛んでいて、ドラゴンブレスを吐きながら王城を攻撃してくる。


「よし、俺が避難の時間を稼ぐ!」


 俺は後の事をララバイたちに任せて一気に上空へと飛び上がった。


「SSランクスキル発動、豪炎の爆撃(グレーターボム)! 食らえっ、豪炎の爆発をっ!」


 俺の手から放たれた火球が白龍に当たり、衝撃と煙で混乱が生まれる。


「そぉら、こっちに来い!」


 派手な演出で白龍たちの意識を俺に向け、追ってこさせるように飛び回った。


「ガァァ!」

「グガァ!!」


 白龍たちは我先にと俺に群がってくる。


「よし、これで時間は稼げる……」


 俺は薄くなりそうな意識をどうにかつなぎ止めて、空を飛びながら白龍に火球を投げまくった。



「これが……ここだけじゃないんだよな」


 つい愚痴がこぼれてしまう。

 同じように意識を飛ばしている先で俺は同時に現地の敵と戦っている。

 何カ所も同時に、敵と戦うのだ。


「頭がクラクラしてくるぞ……。でもどこも手は抜けない。俺が意識を途絶えさせたら、その地の民は避難までに被害が出てしまう……」


 薄くなる意識は、眠い時に似ている。

 少しでも気を緩めると意識が飛んでしまうのだ。


「だからといって、思念体だから身体をつねって痛みで覚醒するなんていうのもできないしな……」


 俺は同時進行している防衛線を維持して戦う。

 白龍たちを冥界の扉に近付けさせないためにも。


「ゼロさん!」


 どこかの拠点から声がする。


「ん? ララバイ……か?」

「はい! マルガリータ王国はもう我らを残すのみ! 冥界への避難は以上で全員です!」

「おお、避難できたか」

「お待たせして申し訳ございません! あ、あの……」

「どうした?」

「ゼロさんのお姿がだいぶ薄くなってきているような気がして」


 精神力がかなり弱まっているのだろう。俺の姿が霞んだりぼやけたりしているようだ。


「いいよ、俺の事は構わないからララバイも急いでくれ」

「はいっ!」


 よし、マルガリータ王国はこれで終わり。一カ所でも意識を向けないで済めば、それだけ他の所へ意識を振り分けられる。


「それではっ!」


 ララバイが冥界の扉を閉めて人の気配がなくなった。


「グラアァァ!」

「天界の奴らめ、殲滅せんめつできずに悔しがっているな?」


 俺は意地の悪い笑いを残してマルガリータへの意識を切る。


 同様に、トライアンフ第八帝国側も、もうそろそろ撤収できそうだ。

 後は……。


「アリアたちか……」


 俺の分割した意識が戦いを続けている。

 空を舞う白い死神がまだ町の上を飛び回っていた。

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