巨大な魔晶石を探して
ヴォルカン火山に俺とルシルはすぐさま飛んだ。思念体の利点は行こうと思った所へすぐに行ける事。
意識を飛ばせば時間も圧縮して進める。
「ここでもいろいろあったなあ」
「そうだね、ドラゴンと戦ったりとかもしたし、ララバイやマージュと魔晶石を取りに行ったのも懐かしいね」
昔話をしている内に、俺たちはヴォルカン火山に到着していた。
「さてと、その魔晶石だけど、どこから探そうかな……」
「前に来た時はドラゴンの寝床とかいろんな所に落ちていたよね……ほら、ここにあったよ!」
早速ルシルが小さいながらもキレイな魔晶石を拾い上げる。
ルシルの言うように、ここにはあちこちに魔晶石が落ちていたものだ。
「すごいなルシル。ただ今回は結構な量がいるし、大きさも考えなくちゃならないから、もっと見つけないと」
「うん、いっぱい探そう!」
俺たちは洞窟の中を探検しながら魔晶石を探していく。
「なあルシル」
「なに?」
「ちょっと噴火口に行ってみないか? だんだん近付くにつれて大きいのが採れるようになっている気がするんだ」
「あ、それ私も思った。いいよ、行ってみよう!」
到着した頃は小さい石が多かったが、奥に入れば入る程大きい石が見つかったからだ。
それはどんどん火口に近付いてきているという事でもある。
「ふぅ、熱さを感じられるようにしたら、結構暑いな」
「うん……暑い。結構温度が上がっているみたいだよ……」
思念体だから暑さを感じたとしても汗をかく想像をしなければ、汗をかかずに済む。
とはいえ、結構暑い。
「だがなあ、大きいのも見つかるし、もう少し頑張ってみるか」
「そうだねえ。でもさあ、こんなにいっぱい、どうやって持っていくの?」
「うーん……」
俺が悩んでいる時だった。
洞窟を揺るがすような唸り声。
「これは……」
俺とルシルは魔晶石を荷物入れに突っ込み両手を空ける。スキルを使った戦闘態勢を取るためだ。
「レッドドラゴンがいるみたいだな」
「うん……」
俺たちは唸り声のした方へと進んでいく。
実体化しているから荷物を持てる。という事は、このままではレッドドラゴンの攻撃も受けてしまう。
「どうしようゼロ……」
「大丈夫だ、ララバイたちが倒した……事になっているレッドドラゴン程度なら、俺たちでもなんとかな……」
狭い洞窟から急に開けた場所へと移った。
そこにいたのはあの時に戦ったレッドドラゴンの二倍は大きいドラゴンだ。
「グルルルル……。このようなところに人間が来るとはなぁ。数年前、儂の孫が人間どもに倒されたと聞いたが、よもや貴様らではなかろうな?」
ドラゴンの孫? まさかあの時にララバイたちが倒したレッドドラゴンや、エイブモズの町を襲ったドラゴンの事を言っているのか?
確かによく見ると、大きさだけではなく色も濃いし、鱗の一枚一枚も大きくそれでいて傷だらけだ。
「儂の孫たちやその卵も人間どもに……」
あのドラゴニュートたちもか……。
過去に倒してしまった事を思い出すと、なんとも複雑な気持ちになる。
「ねえゼロ……」
ルシルがドラゴンの背中を見ていた。
そこには巨大な翼、だっただろう場所に石があって、淡い光を放っている。
「あのドラゴン、翼が石に……それにあの石……」
「ああ。魔晶石だ」
ドラゴンの翼は先端の方から魔晶石に変異していた。