魔力の供給源を探して
ピカトリスを中心に俺たちは対策を講じる。
「やはり問題は魔力量。魔晶石の数が絶望的に足りないのよ」
ピカトリスに案内されて俺たちは大きめの天幕に集まっていた。
「魔力伝達拡散力場っていうのをね、エイブモズで作っていたんだけど」
エイブモズは学術都市でこういった研究は盛んらしい。それに必要となればユキネたちも加わって新たな技術を構築してくれるというのは心強いのだが。
「それでも今回の話は想像以上の事なのよ、解る?」
「ピカトリスが言うのも理解できるけどさ、それができないと天界の連中が攻めてくるのにどう対抗するのかが問題になるんだよな……」
「あれでしょ、ゼロ君は各地を回ってゼロ君たちが冥界に転移させようとしていたんでしょ?」
「あ、うん、まあそうだな」
ピカトリスがグイグイくるものだから少したじろいでしまった。
「天界の奴らと何度か接触したけど、やっぱり俺たちが思念体じゃなくて元の身体に戻ってからじゃないと戦いにならないと思ってさ、今戦力を集めてもたとえ勝てたとして被害がすごくなりそうじゃないか」
「そうよ~、あんなのとまともに戦ったって勝てる訳ないもの!」
「そこは少しでも否定しろよピカトリス……」
「無理無理無理! あたしって超現実主義だもの、潰された町の事とか報告受けただけでも、これはもう駄目だって思ったもの」
「凱王とかブラックドラゴンの力を使ってもか?」
凱王は今やブラックドラゴンの身体に乗り移っているからな、こちらもドラゴン軍団を仕立て上げられればある程度は、と思ったのだが。
それでもピカトリスは全力で否定する。
「ゼロ君はどれくらいの敵を見たのか知らないけどね、天界の奴らってあの白龍が数万の規模でいるのよ!?」
「えっ……」
数万。城塞都市ガレイの攻防戦でやってきた白龍が四体。戦うにしても致命的な一撃は与えられなかったし、あれだけでもあの堅牢な町が壊滅させられた。
それが数万だって?
「もちろん兵力としては天子の使いなんてのも数十万は軽くいるでしょうから」
「そうか、ドラゴンだけじゃないんだな」
「そうよ~。だから、あたしたちだけじゃ……」
天幕の中は暗い雰囲気が包んでいく。
「ねえゼロ、どうしよう……」
「そうだな……魔力という事ではないかもしれないが、力を借りられそうな所に心当たりがあるとすれば……」
「あるの?」
俺はルシルの持っている銀枝の杖を指さす。
「その杖で思いつく所はないかルシル」
「えっ、ユキネ?」
「そうだな、ユキネから受け取った。それから行った場所」
「あ!」
ルシルは気付いたようで顔が明るくなる。
「精霊界、ロイヤちゃん!」
「そうだ。ロイヤたちならもしかしたら精霊界の力を貸してくれるかもしれない」
「うん、それならいけるかもしれないね!」
俺たちが話に盛り上がっている所を見てピカトリスが不安そうになっていた。
「ルシル、ロイヤに話をする事はできるか?」
「うーん、ちょっと試してみるから」
ルシルは銀枝の杖を掲げて念を込めると、宝玉の一つが光り始める。
「ロイヤちゃん、聞こえるかな……」
ルシルの問いかけには細かい雑音だけが返ってきた。
「ザ……ザザ……」
「ロイヤちゃん?」
「……ぁん、ルシルちゃん!?」
宝玉を通して聞こえるのは精霊界にいるバウホルツ族のロイヤだ。
それを聞いてピカトリスが驚くのも無理はない。
「ちょっ、ゼロ君たちは精霊界にも知り合いがいるの!? もう、冥界に避難するとか、いったいあんたたちちょっと見ない間になにをしていたんだか……」
「ははっ、今度ゆっくり話すよ」
「いいけどねっ! でも、これで光明は見えたかしら?」
「さぁ、これからだ」
俺たちは宝玉を通してロイヤに事の次第を話して聞かせる事にした。