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一部魔族の反乱独立

 俺たちはバーガルの宮殿に通される。ドワーフの造った堅牢かつ豪華な建物だ。その中の一室、これまた豪勢な装飾品に飾られた広い部屋へ通された。


「宴でもできそうな部屋だなあ」

「そうね、料理でもあれば余計そう思うかもしれないね」

「まあ、思念体の俺たちじゃあ食事は不要なんだがな」

「そう考えると私たち幽霊みたいな存在みたい」


 ルシルに言われて意識したが、俺もルシルも特殊な思念体として意識だけを過去へ飛ばしている。

 思念体だから腹も減らなければ喉も渇かない。生命としての肉体がないのだから当然といえば当然だ。


「そんな俺たちでも過去の連中とこうして会話ができるし、思念を強く持てば物だって動かせる」

「物を動かすのも、念動力みたいなものかしら」

「超能力みたいな、か。スキルとはまた違うのかなあ」


 俺たちは案内された部屋の真ん中に置かれている椅子に腰をかけながら、雑談を交わしつつバーガルがやってくるのを待つ。


「どうかしら。そういった研究はピカトリスなりユキネなりに任せた方がよさそうだけどね」

「そうだなあ、ここの話が済んだらエイブモズの町にでも行こうか。ユキネとか学者たちの意見も聞きたい」

「いいと思うよ。なら次はそうしましょうか」

「ああ」


 俺たちが次の予定という無駄話をしていた所で、バーガルが部屋に入ってきた。


「お久しゅうございます陛下」


 相変わらずうやうやしい仕草で挨拶をしながらバーガルは俺の前に来る。


「どうだ、瘴気の谷の様子は」

「はい、おかげさまをもちまして安寧に過ごしております。これも外部との接触を極力避けているからこその恩恵もあろうかと存じますれば」

「そうか。民たちが平穏に暮らしていられるのならなによりだよ」

「ははっ、お言葉嬉しゅうございます。して、此度こたびの急なご来訪、いかがなさいましたでしょうか」


 バーガルは俺たちに用意した椅子より若干小さな椅子に座った。一応はバーガルなりの心配りなのだろう。


「天界の者たちがこの地上界へ攻め入ってきている」

「ほう」

「バーガルはなにか知っているだろうか」

「そうですなあ」


 バーガルは右手を顎に当てて考えるが、どうもその動きが不自然にも思える。


「そうですなあ」


 もう一度繰り返す返事。俺の背中の毛がチリチリと逆立つような感覚があった。思念体だから別に毛がなびいたりなんてしないのだが、これは精神的な動きか。


「どうしたバーガル、歯切れが悪いな」

「いえ、どう切り出せばいいかと考えていましたので、少々返答に困りましたが……」


 バーガルは椅子の肘置きに肘を置いて、顔の前で手を組む。


「我の元にも天の使いなる者が訪れましてな」

「天の使い……天界の者か」


 ドラゴン以外にも天界にいるだろうが、強硬手段ではなく搦手からめてでも来たという事か。


「そうです。使いの者ですよ」


 バーガルは素直に認める。


「追い返していないのか?」

「ええ。いろいろと聞きたい事もありましてね、この瘴気の谷に滞在していますよ」

「そうか……」


 バーガルは俺を試そうとしているのか。元々が反抗していた魔族を束ねている魔王だったバーガルだ。組織をまとめる力は疑いようもない。


「それで?」


 俺はどうしても視線が厳しくなる。それでも物怖じしないバーガルもたいしたものだが。


「我ら瘴気の谷に住む者はこれを機に独立し、我らの道を歩みとう存じます」


 言葉は丁寧だが、これは俺が治めていたレイヌール勇王国からの独立を意味する発言だ。


「ゼロ、いいの? これって反乱だよ!?」


 ルシルは怒りで顔を赤らめて椅子から立ち上がる。


「まあ落ち着けルシル」


 俺はルシルを椅子に座らせた。


「なにか理由があるのだな、バーガル」

「おっしゃる通りです陛下。これは我らが選びし茨の道。苦渋の決断でございました」


 手を組んだままのバーガルは、細めた目で俺を見る。

 冷静さは保ったまま。

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