種明かしの勾玉
俺はジミースから茫漠の勾玉を受け取る。
「ゼロ、ど、どういう事!?」
ルシルは俺の腕をつかんで茫漠の勾玉をまじまじと見つめた。
「あ、あうあうあ……」
ペルセナは言葉にならないなにかを口走りながら俺を凝視している。
「勇者ゼロ、つまりはそういう事だよね?」
ジミースの言葉に俺は素直にうなずいた。
「冥界のルールをよく理解している。勇者ゼロ、キミには脱帽だよ」
「え、それってまさか……」
ジミースが言った事にルシルは気付いたようだ。俺がどうやって茫漠の勾玉を手に入れたのかを。
「まあ、大変だったよ。確かに長い距離を歩いたし、途中で獣にも襲われた。まあそれは俺の剣技でどうとでもなったんだがな」
「ふむふむ」
ジミースは俺の話に興味を持って聞いているようだ。
「集まっていた魔獣を倒しながら地下迷宮を潜っていって、そうだ、あの迷宮、魔物だけじゃなかったぞ! 罠もいっぱいあったし、そもそも俺とかルシルの偽物が出てくるなんてのは聞いていなかったからな!」
「はっはっは、それはキミの冒険だからね、そういう事もあるよ」
俺とジミースの会話が理解しにくかったのだろう。ルシルが聞いてきた。
「ねえゼロ、それってゼロが今この一瞬で地下迷宮を探索して茫漠の勾玉を手にしてきたって事なの?」
「ああ、暗黒龍とかそういうのも全部倒してな」
「えーっ! それを?」
「うん」
「今の一瞬で?」
「ああ」
俺は瞬きした一瞬で遠く離れた地下迷宮へと移動し、その迷宮を攻略して最下層にいた暗黒龍を倒して茫漠の勾玉を手に入れたんだ。
そしてここまで戻ってきた。
「でもそれって実際にできる事なの……?」
ルシルは勾玉と俺の顔を交互に見る。不思議そうな目で。
「これは冥界だから、ここだからできたんだ」
「あ……」
これでルシルは理解できたようだ。ペルセナはまだ解っていないみたいだが。
「冥界は意識次第でなんでもできる。想像の力が世界の理を超える事ができれば、それは想像が現実の世界になる」
「えっと、難しい事はよく解らないんだけど、想いが強ければ本当になる、って事だよね?」
「ああ。そう捉えてくれて構わない。そうだろ、冥王」
冥王ジミースは腕を組みながら俺の事を見ている。組んだ腕の上におっぱいが乗っかっているが、まあそれはまた別の話だ。
「ちょっとゼロ、冥王さんと話をするのはいいけどさ、相手と話をする時は相手の目を見なさいよね!」
「え?」
「ゼロの目線、顔より下になってんじゃないの!?」
バレた。
だが俺は悟られないように視線を逸らす。
「ともかくだ、俺は想像の上で冒険し、お宝を得た。さあジミース、これが本物である事は紛れもない事実。これで俺たちを過去へと送ってもらおうか!」
俺は茫漠の勾玉を突き出してジミースに圧力をかけた。
「ああそれの事だけどね」
俺の威圧にも動じず、ジミースはあっけらかんとした様子だ。
「ボクには時間遡行なんてできないんだよね」
俺たちはジミースの言葉に唖然とする。びっくりしすぎて顎が外れるんじゃないかと思ったくらいだ。
そんな中で、ペルセナだけがなにも解らない様子でキョロキョロとみんなの顔を見ていた。