魔雷のアリア
聖剣グラディエイトがベルゼルの胸に突き刺さる。そしてそのまま貫通して背中にまで達した。
「おや」
胸を貫きながらも平然とするベルゼル。
「お前のやることなんてお見通しだよ」
俺も余裕で答える。ベルゼルから少しだけ身体をずらしていたことで貫通した剣は俺にかすり傷一つ付けなかった。だいたい剣の軌道を見ればどこに出てくるかは判る。その先にいなければいいだけだ。
「お前は異常なまでの回復力だからな、自分の身体に剣を突き刺すくらいどうということもあるまい?」
「そうですね、痛いのは痛いのですが……お見通しでしたか」
「ああ、判りやすいくらいにな」
俺は締め上げていたベルゼルの首をねじ切り、手を切らないように剣の刃をつまむとそのまま剣を引き抜いた。剣と一緒に鞭になった腕もベルゼルの身体を貫通して背中から出てきた所を、持ち直した聖剣グラディエイトで斬り落とす。
「またも、してやられました……」
首だけになったベルゼルが悔しそうにうめいた。
「身体もバラバラになっているから元に戻るには時間がかかりそうだな」
「ええ、これは大変そうです」
俺たちの戦いの結果を見届けているアリアが近くまでやってきていた。
「流石ねお兄ちゃん」
「なんだ、お前も出てくるというのかアリア。今度は手下ではなく」
「そうだね、この状況なら私が出て行かざるを得ないでしょ」
アリアはフード付きの外套をはためかせて歩いてくる。襟元の大きなマフラーが一緒になびく。
夜の闇のような髪の間から小さな角が二つ顔を出す。
黄色く輝く瞳は月か獲物を狩る獣のように怪しく光っていた。
「雷の矢!」
いきなり雷属性の攻撃魔法を放ってくる。
「雷なら聖剣グラディエイトで跳ね除けるまで!」
電撃に合わせて剣を当てると剣にそらされて地面に突き刺さり、焼け焦げた穴を作った。
「雷撃弾!」
「おっと」
「召魔雷獣波!」
まさに矢継ぎ早だ。雷属性の魔法や召喚術を次から次へと繰り出してくる。
「雷属性では弾かれるばかりだぞ」
襲いかかってくる電撃を俺は斬り伏せ叩きつける。俺を中心にしていくつもの雷による穴ができた。
「すごいよお兄ちゃん! ルシルちゃんの力を借りても全然歯が立たないや。でもさ、これならどうかな!」
アリアが手を上にかざす。そこに現れる光の塊。稲光が光の塊を囲んで走る。
「おいおい、それは危いぞ」
「でしょ? さあ行って、爆雷煌!」
アリアが手を下ろして俺に向ける。それと連動するように光の塊が俺めがけて落ちてきた。
「うおおぉ!」
俺は剣を立てて光の塊を受け止めようとする。剣が触れた瞬間凄まじい衝撃と圧力がかかって俺を弾き飛ばそうとした。
「ええぃ、なんて力だっ!」
とてつもない威力の電撃を一瞬だけ聖剣グラディエイトが受け止める。
「今っ!」
つま先で踏ん張り、帯電した剣を地面に突き立てた。
「聖魔解放!」
地面にひびが入り陥没する。俺はさらに力を解放するとまた地面が陥没した。そしてもう一段、自分の力も放出すると地面が欠片となって砕け散り、大きなすり鉢状のくぼみの出来上がりだ。
「いっけえーっ!」
雷撃の光が大地のひび割れた隙間から溢れ出す。桁外れの力を受け取った大地が悲鳴をあげる。
俺の剣に伝わる揺れは徐々に大きくなっていき、その様子を見たアリアが目を丸くした。
「すっごい……」