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海底の宮殿再び

 だんだんと暗くなる海の中。俺は竜神の鱗を口に咥えて人魚を追う。

 すれ違うのは小さな魚の群れ。海の透明度は高く、かなり先の魚群まで見える。


 さあて、このマーメイドはどこまで行ってくれるのかな。


 そう思う俺の期待通り、マーメイドは下へ下へと潜っていく。


「なっ、なして人間がずっと海の中を泳いでこれんだべ!」


 遠くでマーメイドの慌てる声が聞こえる。


 返事をしようにも、竜神の鱗を咥えている状態では話ができない。竜神の逆鱗だったら口に当てるだけで呼吸ができるからしゃべる事もできたんだが。


『ゼロ、大丈夫?』


 ルシルからの思念伝達テレパスが伝わってくる。


『ああ。でもルシルも入れるなら入ってきてくれるか?』

『判った』

『おってこれるか』

『方向は判るよ』

『よし、頼む』


 ルシルは俺の泳ぐ後を追って海に潜ってくれるようだ。

 呼んだ理由は簡単で、この奥には俺の知っている場所があると思ったから。


 竜宮城。


 マーメイドがいるという事は、近くに竜宮城があるのではないか。そしてマーメイドは竜宮城へ向かって泳いで行っているのではないか。

 俺の予想ではあるが、確信に近いものがあった。


「人間めっ、どこまでおらを追っかけて追っかけてくるんだべ~!」


 マーメイドはわめきながら泳いでいく。

 だがそれが俺の道しるべにもなってくれている。


 そうこうしているうちに、真っ暗な海底が近づいてきた。海藻の林が立ち並び俺の行く手をさえぎるかのようだ。まるで侵入者を拒んでいるかのように。


『おっ……』


 その暗い中にぼんやりとだが光が見えてきた。

 前にも見た、海底の中に浮かび上がる人工の光。


『見えてきたな』


 徐々に光が近づいてくる。以前に見たような光景だ。


「待てぃ!」


 前方から数体の魚影……いや、マーマンが現れた。俺とした事が、海藻の林に紛れて出てきたマーマンを見過ごしていたようだ。


 俺は両手を上げて戦意がない事を示す。やってきたマーマンたちは魚っぽい顔を俺に近付けてじろじろと見ていた。


「よし、そのまま大人しくついてこい」


 マーマンの一人が三つ叉の槍を俺に向けて、進む方向を指示する。


「お前、人間なのに海の中で息ができるんだな」


 マーマンの問いに、うなずいて応えた。どうやらそれでマーマンは理解してくれたらしい。


「あーっ!!」


 マーマンに引きつられて泳いでいる俺を、さっきのマーメイドが見つけて叫んでいた。


「なしてこげな人間を連れてくるんだべ!」

「おお、メンコか。お前には言っていなかったか。姫様が先読みをしてな、近々人間が城へやってくるという事だったのだよ」

「えぇ!? そいつがその人間だべか!?」

「そう……らしいな」

「なして判るべか」

「そりゃあ、ここ千年近く人間なんて城にやってきた事がなかったからなあ」

「だべか……」


 マーマンたちの会話を聴きながら、俺は黙って案内されるがまま泳いでいた。


 ん……? 城に、千年近く人間が来ていない?


 俺がいろいろ考える前に、巨大な城門が目の前に現れた。

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