表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/1000

魔王の右腕

 魔王の右腕を自負する魔族の実力者ベルゼル。魔界の貴公子とも呼ばれるその姿は端整な顔立ちも手伝って、人気も高く人間にも崇拝する者がいるほどだ。


「ワタクシの力はご存じの事かと思いますが」

「三年前のお前の実力ならな」


 ベルゼルが不敵に笑うがそれでも外連味けれんみのない表情は敵の心もくすぐる。

 俺が魔王討伐を成し遂げたのが三年前。その時に最後の砦として勇者の前に立ち塞がったのがこいつだった。


「それでは時間も惜しいので行かせていただきます。暗黒の棘(ダークネス・ソーン)!」


 ベルゼルは両手を俺の方へ向け、そこから真っ黒な棘が無数に生成される。

 ベルゼルの唱えた魔法は針のような細かい棘が無数に降り注ぐ闇属性のもので、一本はそれほどの威力ではないがこれが十本、百本と突き刺さると流石に鬱陶うっとうしくなってくる。


「しかもそれが百万本ともなるとな! 受けるだけでも精一杯だぞ」


 俺はいつまでも生み出される棘を剣圧で振り落とす。盾ででも受けようものなら一瞬で穴だらけにされてしまう。

 魔力量といい展開力といい、単純な攻撃魔法でさえこのレベルだ。全てを弾く事はできず、何本かは俺の着ている鎧に突き刺さる。


「お楽しみいただけたのであればワタクシも嬉しく思います。黒棘の引き裂き(ソーン・トーン)!」

「ぬっ!」


 突き刺さった棘が破裂して鎧を引き裂く。


「大した威力じゃないか」

「ええ、それはもう。あなた様に倒されてからどのようにすれば一矢報いる事ができるか、そればかりを考えておりましたもので」

「努力が実ってよかったな」

「まったくです。少しは戦いらしくなりましたかな」


 俺は返事代わりに剣を一閃する。剣圧でベルゼルの左腕が斬り落とされた。


「おや、狙いがずれましたか?」


 ベルゼルが気合いを入れると斬られた腕が生えてきた。


「これくらいではワタクシの再生力で回復してしまいますよ」

「そうだな、それは昔と変わらない」

「ええ、能力としてはそうかもしれませんが、格段に回復速度が上がっていますし、何より……」


 ベルゼルの腕が鞭のように伸びて俺を向かってきた。剣で弾こうとするが剣に巻きついて離れない。


「おっと、そんな使い方が」


 ベルゼルの鞭になった腕が剣を取り上げる。


「はい、これで聖剣グラディエイトはいただきました」

「やってくれるな」


 俺は素手のままベルゼルとの間合いを詰める。


「速っ!」


 ベルゼルの喉元を左手で鷲づかみにしてそのまま押し込む。


「させません!」


 ベルゼルが俺から奪った剣を鞭の手のまま逆手にして俺の背中めがけて突き刺そうとする。


「自らの武器で死になさい!」

「そう思うか?」


 俺はベルゼルの首をつかんだまま背後に回って首を腕で締め上げる。右手でベルゼルの腰に手を回し身体を密着させた。


「このままだと自分に突き刺さるぞ」

「そうでしょうか?」


 ベルゼルのかすかな笑い声が耳に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ