芋づる式に次から次へと
俺の当てたハルバードが甲高い音を上げる。手に握った隊長はそれを見て今度は顔を真っ赤にした。
「きっ、貴様ぁ! これは治安維持部隊に対する、いや、ボンゲ公国に対する宣戦布告と受け取ったぁ!」
そしてなにやら懐から笛を取り出すと一気に吹いた。
鳥の鳴き声のような音が辺りに鳴り響く。
「わ、我らだけでも取り押さえるのは容易だが、ここは確実を期して応援を呼んだのだぁ!」
「隊長、なにもそこまで」
「うるさいっ! 隊員は口出し無用っ! 歯向かえば利敵行為とみなすぞっ!」
「ひぃっ!!」
隊長は他の隊員にもにらみを効かせる。もうそれだけで隊員たちの反抗心は鎮火してしまったようだ。
「隊長に楯突く前に、目の前の仕事をこなして見せろっ! 奴らを引っ捕らえてくるのだっ!!」
「はっ、はいっ!」
隊長は落ちた兜を拾って被り直す。捕り物は隊員たちに任せて自分は後ろで高みの見物でも決め込もうとしているようだ。
「ゼロ、あれって効くかな?」
「ハルバードは鉄製みたいだからな、行けるんじゃないか」
「そうだよね、やってみる!」
襲いかかってくる治安維持部隊の連中を前に、ルシルは両手を突き出して立ち塞がる。
「はい、じゃあ今度は当てるよ~。Nランクスキル雷の矢!」
ルシルの放った電撃が隊員たちのハルバードに次々と命中した。
「ひぎゃっ!」
「ビリッとしたぁ!」
「いででで!!」
今まで経験した事がないであろう電撃の痺れを体験して、隊員たちはハルバードを落としてしまう。
「なぁにをしておるかぁ! 情けないっ!」
後ろでわめき散らす隊長。
「だったらお前も来たらどうだ? 刺激的な体験ができると思うぞ」
「なっ……いや、もう応援が来たのでな、やはり現場に手柄を立てさせてやるのも隊長の役目だからな!」
「ほう」
隊長が言うように、呼び笛で集まってきた兵士たちが俺たちを囲み始める。
「おいおい」
俺は集まってきた兵士たちを見てあきれ顔で突っ込みを入れた。
「見た所百人もいないじゃないか。これくらいの兵力で俺を止められると思っているのか?」
「なっ、なんだとぉ!?」
「はぁ……。いいだろう、もっと兵を集めたくなるようにするか」
俺はルシルと共に包囲網へと突っ込んでいく。
「Rランクスキル発動、雷光の槍! 群がる敵を打ち倒せっ!」
俺の放った電撃の槍が兵たちのハルバードや鎧に当たり、兵たちを痺れさせる。
動きの鈍った連中を足蹴にして包囲網を突破していく。
「なっ、なんて奴だ……ええい、見ておらんでとっとと捕まえんかぁ!」
隊長はわめくが、それをお前が言うか……。
次々と応援に駆けつける兵たち。だが、それは俺にあっさりと片付けられて戦いから脱落していく。
電撃の痺れだ、すぐには復活できないだろう。
「ぐ、ぬぬ……」
そろそろここら辺の勝負も終わらせないとな。そう思った所で、俺は隊長の近くへ一気に間合いを詰める。
「Rランクスキル発動、超加速走駆! さあ、距離を縮めて片をつけようかね」
俺の剣がもう一度隊長の兜を跳ね飛ばす。
「びぎっ!」
隊長の鼻白んだ顔が目の前に現れる。
俺の剣がその顔に切っ先を向けた時だった。
「面白そうな事になっているじゃないか」
また別の所から聞こえる力強い声。
「ひ、軍長様……」
隊長の情けない声で、そいつが治安維持部隊の隊長よりも格上だという事が判る。
「お前が次の親玉か」
「ふむぅ?」
俺は隊長を蹴り飛ばし、振り返りながら軍長と呼ばれた奴へと向き直った。