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きょうだいって似るものか

 宮殿を後にした俺は城門の手前まで進む。


「それにしても兄弟というのは本当に似るものなのだな。反応といい情けないところといい……」


 待機場所でヒマワリが手を振っている。俺はヒマワリのいる城壁の上に行き、まだ外の平原で隊を整列させている魔族軍を見る。


「ゼロさんどうでした、謁見の結果は」

「ああうまくいったよ。これで国王が俺に手を出す事はなくなったよ」

「そうなんですね、それはよかった」


 何も知らないヒマワリは無邪気に喜んでいる。

 そんな俺たちの所に数名の近衛兵が駆け込んできた。


「大罪人ゼロ、弑逆しいぎゃくの罪で逮捕する!」


 近衛兵が俺の罪状を突きつける。


「えっゼロさん弑逆しいぎゃくって、何をしたのよ!」

「そのままの意味、王殺しだよ」

「王って、国王陛下を殺しちゃったの!?」


 俺は黙ってうなずく。


「神妙にばくけ!」


 俺は近衛兵たちに向き合って剣に手を添える。


「ここで斬り合いになったら結果は見えていると思うが?」

「だ、だからといって王殺しをみすみす逃す訳にはいかない!」

「その役目、大義だ。だがこれは身から出た錆、自業自得というものだ。考えてもみろ、魔王が倒れてから先、国王が無理な領土拡張を行いそこに住んでいた者を力で追い払った。理不尽にも生活を、仲間を、家族を奪われた者たちは逃亡先で同じ境遇の者と出会う」


 近衛兵たちは手出しをしてきそうにない。


「ある程度数が揃えば、自分たちをこのような境遇に追い込んだ者に仕返しをしてやろうと考えるだろう。その結果がこれだ!」


 俺は城門の先に見える魔族軍を示す。


「無慈悲な政治が敵意を生む。身の丈に合わない侵略の結果、手痛いしっぺ返しを受けてこのザマだ。国土は荒廃し王都にまで敵が押し寄せる事になったのだぞ。国を治める者の失態とせずになんとする!」

「とはいえ王を殺してもいいという法はない!」

「これだけの命をあたら失った責任は取るべきだ。ただ俺が手を下したに過ぎない。それに、この後お前たちはどうするのだ。このまま魔族に蹂躙されてその命を終えるか?」


 近衛兵たちが歯噛みする。


「職務を全うしようというその気持ちは大切だ。であれば近衛として国のいしずえとなる民を守ってもらいたい。俺はこれからあいつらをどうにかしてくる」

「ゼロさん!」

「ヒマワリ、心配するな。お前は弟を見つけて守ってやれ、いいな!」


 俺は城壁から飛び降りて平原に向かう。その先の魔族軍へと。


「どうれ、これを片付けたらまた開拓を始めようかね」


 魔族軍の目の前まで来た俺は、軍の中央部に向かって叫ぶ。


「ルシルー! 出てこいよ!」

「お兄ちゃん!」


 おや。声は同じだが反応に違和感があった。


「もしかしてアリア、アリアなのか!?」

「そうだよお兄ちゃん」


 俺の視線の先にはスケルトンの部隊の奥に見えるヒルジャイアント。スケルトンの倍くらいの身長がある。そのヒルジャイアントの左肩にちょこんと座るのは封印した魔王ルシルをその身に宿している女の子。

 だが、今はルシルではなく器の方の女の子、アリアが、俺の妹が返事をしていた。


「兄妹といっても似ていないものだがな」

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