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少数のスキル使いは重宝される

 ドブリシャスたちボンゲの兵士たちに連れられて、道らしい道も無い草原を俺たちは進む。

 分隊のいくつかとすれ違い、合流し、また分離していっているが、いつの間にやら百人規模の大所帯になっていた。


「な、なあドブリシャスって言ったか」

「ははっ!」

「そうかしこまらなくていいけどさ、その仕掛け師っていうの? それってなんだ?」


 俺がドブリシャスに聞いてしまうと、ルシルは少し俺の裾をつかんで嫌そうな顔をする。


「ゼロ~、私たちが仕掛け師っていうのを知らないの、判っちゃうでしょ……」

「それはそうなんだが……取り繕っても仕方がないと思ってな。だったら直接聞いた方が早い」

「そうだけどさぁ」


 ルシルが言うように、もう少しやんわりと聞いた方がよかったかな?

 でも時は戻せない。聴いてしまったものはしょうがない。


「はいっ、仕掛け師というのはですね」


 あ、大丈夫そうだ。

 ドブリシャスは嬉々として答えてくれる。


「仕掛け師はからくりや技術を使って手妻てづまを行う者を言いまして」

「手妻? 手品みたいなものか。広い意味では魔法使いだな」

「はい! 地方によってはそのように言う所もあるそうですが、我らは仕掛け師と言っております!」


 そういう事ならスキルも剣技も使える俺たちは、まあ……あながち間違いではないという事か。


「スキルを発動させられる奴は少ないのか? スキル自体が珍しいとか」

「えっと、そうですね……。我らボンゲもそうですが、近郊の勢力はどこもそういった力を持っている者はあまり。まったくいない訳ではないのですが」

「なるほどな」

「あの剣を折ったお手並み、お見事でした!」

「あ、ああ」


 あれはスキルも剣技も使っていなかったから、純粋に俺の技量なんだが……。そんな状態で本当の爆炎スキルとかを発動させたら、それこそびっくりして腰を抜かすんじゃないだろうか。


「ねえゼロ、そう言えばさっきの赤い方」

「赤い方? ああ、今のこのボンゲ公国っていうのが青っぽい装備をしているからな、赤い方だとガンゾとか言っていた方か。それがなんだ?」

「そうそう。あっちの赤い方もさ、あんまり魔力を感じる人はいなかったよね」

「う~ん」


 確かにそれは俺も感じた。スキルを発動できる者特有の、魔力というか力場というか、そういうなにか身体からにじみ出るなにかを、俺もあまり感じられなかった。

 それはここにいる青い奴ら、ボンゲの者たちも同じだ。


「ルシルの魔力が強大すぎて、周りの連中が霞んで見えちゃうっていうのはあるけどな」

「え~」

「あまりに眩しい光を見ると、周りの小さな明かりは見えなくなっちまう感じ、かな?」


 ルシルは納得したのかは知らないが、なにかを考えこんでしまった。


「そろそろ見えてきますよ、我らが拠点としている村です」


 ドブリシャスが隊列の先の方を指さす。


「ほう」


 規模はそれ程大きくはなさそうだが、ここからでも建造物、物見の櫓や煙突がいくつか見える。


「是非ごゆっくりいただいて、村に駐屯している我らの部隊にもその手妻を披露していただきたく!」

「え、見せるの?」

「はいっ!」


 ドブリシャスはウキウキした表情で俺たちを見た。


「あれ? 見せるって、見せてどうするんだ?」

「え、なにをおっしゃっているんですか」


 困ったような、しょうがないなあっていう顔をしてドブリシャスが頭をかく。


「仕掛け師さんですよね、舞台で奇術をご披露いただいて、兵士たちの慰労をしていただきたいのです!」

「へ?」


 好奇の目で見ている連中、娯楽に飢えていて俺になにかを期待している連中。

 そういう事か。


「ゼロ……私たち、もしかして……」


 ルシル、みなまで言うな。

 そう。俺たちは二人連れの旅芸人と思われてしまったようだ。

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