手作り宿で一休み
ロイヤは草原に生えていた背の高い草を集めてなにかを編み込んでいたかと思うと、それを器用に重ねて板状の物を作っていく。
草はこの辺りであればいくらでも取れる素材だ。
「ほら、これで草の板をくるくるっと丸めれば……」
「おお!」
ロイヤが板を丸めて、広がらないようにこれもまた草で編み込んだ縄で縛ると、一本の長い棒ができた。
「これをこうして……こう……」
見る間にいくつもの部品ができあがり、それを組み立てると。
「小屋だ。草でできた小屋が……」
「ひとまずこれで完成なん!」
頼もしいというかありがたい事に、ロイヤが草を使って小屋を建ててしまったのだ。簡易的とはいえ雨風もしのげそうな作りになっている。
「すごいな……これだけの短時間で」
「木材があったらもっと簡単だったなん」
「流石ね、ロイヤちゃん」
俺とルシルに褒められて、ロイヤは胸を張った。
「これで今日は野宿せずに済んだな」
「そうね。ロイヤちゃんのお陰ね」
「ああ。ありがとうな、ロイヤ。こっちの世界にやってきてすぐに働かせてしまったが、助かったよ」
俺はロイヤの頭を優しくなでてやる。
「ロイヤは元々家具職人の家系なん。こっちの世界に逃げてきてからは一族の人たちがどんどんいなくなって、族長をするしかなくなってしまったのなん。でもロイヤは家具を造っている方が好きだったなん」
「そうなのか。大変だったなあ」
「うん……」
俺たちは草むらを跳ねていたウサギを捕まえ、火をおこして食事の支度を始めた。
「なんだかんだでもう日が落ちるからな。本当、ロイヤがいてくれてよかったよ」
俺は焼いたウサギ肉をほおばって、ルシルがスキルで作ってくれた水で飲み込む。
「生活はどうにかなると思うけど、さてとこれからどうするかな。ルシル、思念伝達で誰か知っている奴に連絡は取れないか?」
「う~ん、試しているんだけどなかなか反応がなくて……。それどころか近くに意思疎通ができる生命体が見当たらないのよね」
「そうか。範囲を広げながら探索してみるかな」
「そうなるかしらね」
「ふむ……そうするとこの小屋も折角造ってもらったからなあ、移動するのももったいない気がするが」
俺は焚き火を見つめながら、その焚き火の向こうに建ててある小屋に視線を移す。
「それなら大丈夫なん」
「そりゃああれだけの手際だから、また造ってもらうのもできるかもしれないが、それも毎回だと大変だろう?」
「そんな事したらロイヤでも大変なん。そうじゃなくてこの小屋、組み立てを外せば持ち運びできるなん」
「えっ!?」
「こことここ、あとここを外せばバラバラになるなん」
「おう……」
「それから丸めてしまえば、小さくできるなん」
「なんと……」
そこまで考えられて造っていたのか。
ただ家具や小屋を造れるだけではなく、持ち運びの事も考えていたなんて。
「すっごーいロイヤちゃん!」
「えへへ~」
ルシルが上機嫌でロイヤに抱きつく。その気持ち、俺も判らないでもない。
「それなら今日は小屋でゆっくり休んで、明日から探索を始めようか」
「うん」
「判ったなん」
小さいウサギではあまり腹が満たされなかったが、明日に少し希望が持てたから、今夜はよく寝られそうだな。
日はすっかり落ち、俺たち以外に明かりを生み出す者がいない世界では、星の明かりだけが眩しく見えた。