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死と再生

 斬り落とされたドラクールの腕が宙に浮く。


「儂の肉体は冥界にあっても物理的な要素を持つ。そこが冥界の伯爵たる儂の強みじゃ」


 浮いた腕がドラクールにくっつき、傷口がふさがっていった。


「そういう点では勇者ゼロも同じような要素を持っているようじゃの」

「俺が、か?」

「そうじゃ、この亡霊どもとは違い、肉体を冥界に持ってきておる。儂は冥界で発生した存在じゃからな、冥界の生き物とでも言おうか」

「ギルタブリルとかも実体はあったな」

「まさしく。冥界にも生き物はおる。いや、肉体を持った存在もおると言った方が正しいかのう」


 ドラクールが腕をさすると、もうそこには切られた傷は残っていない。

 その間、いくつかの顔を剥いでその霊気を傷口に擦り込んでいた。


「見たであろう。儂の身体は霊体を使う事で若さも頑健さも能力も得る事ができるのじゃ」

「そのために死者の魂を使うのか」

「小さき者よ、肉体があるのであればこの冥界で永遠の若さと力を得る事ができようぞ! 霊体などというものはいくらでも手に入る。なんせここは冥界、死者の辿り着く先じゃからな」


 ドラクールは両手を広げて天に向ける。空中に浮かんでいた星のような光の塊が、ドラクールに引き寄せられて手を伝い、マントに吸収されていく。


「ほうれ、こうすればいくらでも力は得られるというものじゃ!」


 恍惚とした笑みを浮かべてドラクールが魂を吸収する。


「やめろっ!」


 俺は剣を一閃してドラクールの首を刎ね飛ばす。

 転がるドラクールの首。

 だが、先程の腕のように首が宙に舞い、元の身体に収まった。


「儂をいくら切り刻もうが、いくらでも再生は可能じゃ。傷跡すら残らん」

「首を斬ったのに、か……」

「それに霊力を使えばこういう事もできるっ!」


 ドラクールがまた光る魂を無数に集める。その光りが両手に集約し、どんどんと眩しくなっていく。


「そぉれっ!」


 腕を振り払うドラクール。溜まった光の塊が俺に向かってくる。


「くぅっ」


 俺はなんとか剣で弾き返す。

 飛ばされた青白い光の塊は、部屋の壁にぶつかって大きな破裂音と共に壁を破壊した。


「結構内力だよゼロ!」

「判ってる」


 ドラクールは次々と光の球を投げつけてくる。


「さあさあ、小さき者たちよ、冥界で生きる存在となって無限の生を謳歌おうかしようではないか!」

「ドラクール、そのためには死者の魂を使うという事か!」

「当然。既に使い果たされた命じゃ、儂がそれを有効に使ってやっておるのじゃ! 生き物など常に吐いて捨てる程生まれてきよる。数に困る事はあるまい!」

「死はその世界での終焉、その後に別の世界が存在するというのは構わないが、だとすれば!」


 俺は超覚醒剣グラディエイトに魔力を注ぎ、剣から魔力の炎をほとばしらせた。


「それを捕らえて食い物にするという事は認めんっ! Rランクスキル発動、超加速走駆ランブースト!」


 投げつけられる光の球の間をすり抜け、ドラクールの背後を取る。


「まずはその魂、解放してやろう」


 俺はドラクールのマントを斬りつけ、その身体から引き剥がす。


「なっ!? よせっ!」


 引き剥がしたマントは中で魂がうごめいているのだろう。風になびくものとは違い、不自然に揺れていた。


「ルシルっ!」

「うんっ! SSSランクスキル、地獄の骸爆(ヘルズ・バースト)っ!」


 ルシルはスキルと発動させて巨大な炎の玉を作り上げる。


「それしきで儂は倒せぬぞ!」

「それはどうかな? 頼むぞルシル!」


 俺がマントを放り投げると、それに向かってルシルが赤白く燃えたぎる炎の玉を解き放った。


「うんぬっ!」


 驚きに目を見開くドラクール。

 その眼前で、大爆発と共にマントが四散した。

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