魔力の武器制作
俺は氷柱のような塊を作る。
「Rランクスキル発動、氷塊の槍。これを持ってみるがいい」
氷柱は俺の目の前に突き刺した状態で生成した。
ドゥエルガルの亡霊が俺の作った氷の塊へ手を伸ばす。
「お、おお……」
それはもういいっての。
「それで、どうだ」
「触れ……られる。あっしでも触れることができやす!」
よしっ!
「なら持ち上げてみろ!」
「おお!」
ドゥエルガルは俺の作った氷を手にして地面から引き抜く。
「ゼロ、どうして亡霊なのに物が持てたの?」
「物、そうだな。物質でもあるがあの氷は俺の魔力から生成されている。言わば魔力の塊だ」
「あ!」
ルシルも気付いたようだな。
「魔力であれば霊体でも攻撃する事ができる。だったら」
「霊体である亡霊でも、持つ事ができる!」
「その通り」
「すごい! ゼロすごい! ただの怖がりさんじゃなかった!」
最後のは余計だが、そう言う事だ。
肉体を持たないからこそ物質では傷つけられない。
だが魔力であればダメージも与えられるのであれば、持つ事もできるのではないかと思ったんだ。
「おいそこの亡霊よ」
「へ、へい」
「その氷の塊、お前の能力でより強い武器へ造り替えることが可能か? 俺はそこまで器用にできないが、お前たちなら……どうだ?」
ドゥエルガルは手にした氷の槍と俺を交互に見る。
「お前の能力、鍛冶師の仕事はどうだ」
「あ、ああ!!」
「どうやら得心がいったようだな」
「へいっ!」
返事をするやいなや、ドゥエルガルは手にした氷を手刀で叩き割った。
「もう一本、いりそうだな」
「へいっ!」
俺はもう一回氷の槍を生成して地面に突き刺す。
ドゥエルガルは叩き割った氷の欠片をナイフのように尖らせ、新しく作られた氷を削り始めた。
「ゼロ、もしかしてこれって……」
「ああそうだ。ドゥエルガルは武器を持たせれば屈強な戦士になれる。そして今手にしているのは」
「氷の……斧?」
氷を削り出し、時には欠片をくっつけ、できあがった物は氷で作られたバトルアックス。両手で持つ戦闘用の斧だ。
「ルシル、こいつの治癒を頼んでもいいか?」
「うん! SSSランクスキル蘇生治癒!」
ルシルがスキルを発動さ、ドゥエルガルの両足に手を添える。
直接触れることはできないが、ルシルのスキルで発生した治癒の力は、足を失ったドゥエルガルに新しい足を再生させるのに十分だった。
「おお!」
治されたばかりでドゥエルガルは立つ事がやっとだったが、それでもバトルアックスを支えにして自分の両足で立ち上がる。
「ありがてえ! あっしにもお役に立てる事ができやすぜ!」
ドゥエルガルは斧を軽々と振り回す。そのたびに、氷で削られた斧が小さな光の粒をほとばしらせる。
それはまるで、満天の夜空を横切る流星のごとく。
「こいつぁすげぇ!」
ドゥエルガルが斧を振り回し、その一振り一振りでヘルハウンドが倒されていった。
「すげえですよこれ! あっしでもこの犬を倒せやしたぜ!」
よし、想定通りだ!
「それならこれを拡大していく! 俺は氷をたくさん造る! お前はその氷を使って武器を作れ! そして戦える者は武器を取れ! 戦えない者は俺たちの所へ来いっ!! もう一度癒やしてやる!」
俺は辺りに響く大音声で呼びかける。
その間にも鍛冶師仕事をするドゥエルガルが、次から次へと氷の斧や氷の剣を削り出していた。
「さあ、反撃するぞ!!」
致命傷以上の怪我を負っている者はルシルの回復スキルで癒やしてもらう。
「戦い方は俺が教えてやる! 俺に続けっ!!」
癒やされて戦線復帰できる者は俺の後に続く。そうでなくとも上半身を起こすアクションができるやつは、中途半端な体制でも斧を振りかざして近寄ってくるヘルハウンドを撃退してくれた。
俺は氷の素材を作り、ドゥエルガルたとが武器へと変えていく。
そして四肢を失った姿で俺たちに集まってくるのは……。
「もう恐れるものはありやせんぜ!」
「おおっ!」
「乗り込んでいこうぜ!」
「おおーっ!!」
響き渡る雄叫び。おのおの手にした武器が眩しく光っている。周りには氷の武器で叩き潰され、斬られ、突き刺されたヘルハウンドたちが転がっていた。