精霊界の仲間たち
俺とルシルは旅に出ようとしたその支度のままギルタブリルがいた所を目指そうとしている。
道案内としてイチフンに頼んでいるが、それでも冥界に行くのは俺とルシルだけでいいと思っていた。
「ゼロちゃん、それは無茶なのなん!」
「どうしてだ? 俺とルシルだけでは冥界であのドラクールを倒す事はできないと思っているのか」
「そうじゃないなん、だいたい冥界に行くの自体危ないなん!」
ロイヤは必死になって俺を止めようとする。
地上界、俺たちの元の世界に行く事に関しては理解もしてくれようが、冥界に行くとなると話は違うのだろう。
「ロイヤ、ゼロちゃんが冥界に行くのは……」
「なぜかって?」
ロイヤは小さくうなずいて応える。
「ロイヤちゃん」
ルシルがロイヤの肩に手を置く。
「ゼロはね、私たちの王様なの」
「うん。ロイヤも、ゼロちゃんと王様と臣下の契約をしたなん。ロイヤはゼロちゃんの臣下なん……」
「そうね。だから、なのよ」
「ほぇ……」
ロイヤはいまいち理解できないような顔でルシルを見る。
「いい、ロイヤちゃん。ロイヤちゃんはゼロの臣下。家臣よね」
「う、うん……」
「そのロイヤちゃんを族長として、姫として認めている村の人たちがいるわよね」
「うん、いるなん。みんなロイヤの大切な仲間なん。ロイヤは一族のためにならなんでもできる事をするなん」
「そうでしょう? いい子ねロイヤちゃんは」
ルシルはロイヤの頭をなでた。幼い子供にするかのように、柔らかく、優しく。
「村をこんな風にして、村の人たちをいっぱい傷つけた。それがゼロは許せないのよ」
「でも、バウホルツ族のみんなはゼロちゃんの臣下じゃない……あ」
ロイヤは気が付いた。
「ゼロちゃんはロイヤの王様で、一族のみんなの族長はロイヤ……」
俺は外套をひるがえして歩き始める。
「いいかロイヤ、俺の家臣はお前だ。そしてお前を族長と認める者たちも俺の民と言っても過言ではない。だからだ」
「あ……」
「俺の民をここまで傷つけた奴を放っておく訳には行かない。やった事の報いを受けさせてやる!」
「ゼロちゃん……」
俺は一度拠点に戻ってからこの村の大火災の復讐を考えていた。今の俺じゃあ力が弱い、そう感じたからだ。
強さが戻ってから、この落とし前は付けてやろうと思った。
だがそうはいかない。これをしでかした奴が判った。そしてそいつのいる場所へ向かう道筋が見えるかもしれない。
「だとしたら、お前たちの無念は俺が晴らしてやる」
「ゼロちゃん!」
「だから後は俺に任せろ。死んだ者たちを生き返らせるわけにはいかないが、少なくとも二度とこのような事が起きないよう、諸悪の根源を叩き潰してくるからな!」
俺はイチフンに先へ進むよう促し、後についていく。ルシルはその俺の後を小走りについてきた。
「ゼロちゃん……」
ロイヤは深々と頭を下げ、俺を見送る。
「ロイヤ、お前は復興のために村の者たちと力を尽くせ。そうして吉報を待つ事だ」
「うん!」
涙に濡れながらも笑顔のロイヤが精一杯の声で俺たちを送った。