無命の有機体と無命の無機体
俺の後には百人近くの兵士が続く。
「俺の考えに賛同する者、俺の力に期待する者、王国への反感を持つ者、事なかれ主義の者、想いはそれぞれだろうが俺の後に付いてくるのであれば、その期待には応えよう。策略で俺を裏切ろうとする者がいたとしても実際に俺の邪魔をしなければそれで構わない」
兵士たちはそれを理解してくれている、と思いたい。
裏切りがあったとしてもそれはその場でどうにでもなる。不満を持つからといって実害がなければとがめる事はないからな。気持ちまで全て制御しようとは思わないし。
「ゼロさん、見てくださいあれ」
少女兵ヒマワリが教えてくれる。かなり遠目が効くようで、距離のあるものも俺より早く見つける事が多い。
目をこらすと町並みが遠くに見える。
そこから立ち上る黒い煙。
「町が襲われているんじゃ……」
「通りかかったのも何かの縁だろう。放っておく事もないからな、来たい奴だけ付いてこい」
俺は黒煙を上げる町に向かって走り出す。
初めはヒマワリと数人が俺に付いてきたが、一人また一人と増えていく内に全員が町に向かう事になった。
「考えは人それぞれだ、付いてこない事も自由だぞ?」
「そうですけどね、残ったからって何かできる訳でもないし、付いていかないんだったら元々一緒にいませんよ」
「そうか、それもそうだな」
黒煙が近くなる。建物の焼けるにおいが鼻をつく。
「助けられるだけ助けよう、逃げ遅れた者がいたら助けてやってくれ。だいたい何がこんなことになったのか確かめる必要がありそうだ」
「王都が魔族に攻められているっていう事でしたから。周辺の町ではもう……」
「かもしれないな」
人の気配はない。あらかた逃げたのかそれとも既に……。
町の中に入ると固い物で叩いたりこすったりするような音が聞こえてくる。角材をぶつけたりするような乾いた音だ。
「音の正体はこいつらか……」
「ひっ、ゼロさんこれは」
「死してなおその骨が魔力によって操られている意識の無い怪物……」
俺は骨だけになっても動いている怪物たちに剣を振り下ろす。
乾いた骨の音が辺りに響く。
「動く骸骨だ」
「骸骨が動いてる……」
ヒマワリが恐怖で顔が真っ青になる。
俺を敵と認識したのか、次々とスケルトンがやってきては俺に向かってきた。
「こいつらは苦手なんだがな。敵感知が効かないからどこから来るかどれだけ来るかが判らん」
「へ、へぇ、そんなもんなんですね。勇者スキルっていうのも大変なんですね」
「まあな」
俺がスケルトンを攻撃する。斬っても斬ってもきりがない。
「まったくどれだけいるんだ」
俺のぼやきと同時に、他の兵士たちが路地から逃げ出してきた。
「うわっ!」
その後から現れたのは、大きな土でできた人型の動く物。
「泥人形、だと!?」
土を固めた家よりも大きな人形が迫ってくる。
「ゼロさん、これはやばいよ!」
「逃げようよゼロさん!」
心配するヒマワリや兵士たちをよそに、俺はスケルトンを蹴飛ばして粉々にするとゴーレムに突撃した。