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魔族の台頭と対等な地位

 魔族。魔界から湧き出すように現れた者たち。

 十二年前に突如として出現し、魔王を中心として瞬く間に勢力を広げてきた。

 いくつもの町や村、そして国までも滅ぼされていき、ムサボール王国にもその被害が出始めたのが今から十年前だ。


「ムサボール王国も抵抗はしていたが、五年前だったな、入隊したての衛士の俺に魔王討伐を命じたのは。それから俺は二年の月日をかけて魔王を倒した。それで魔物たちの攻勢が収まるかと思ったが、かえって無秩序に辺りを荒らし回るようになったのはお前たちも知っての通りだ」


 魔王がいた頃はまだ統制の取れていた魔族たちだったが、俺が魔王を倒してからは高レベルの魔物たちも各地へ散らばるようになった。


「確かにな。倒しきれなかった幹部クラスが暴れまわっていたりもした」


 それまで低レベルのモンスターくらいしか相手にしていなかった兵士たちにしてみれば、とてもではないが太刀打ちできない。そんな相手がごろごろと襲ってくるようになった訳だ。


「だから俺がずっと町や村を回ってそういったはぐれ魔族を退治していたのだが、それが王国のお偉いさんたちにはただ諸国を遊び歩いているように見えたのだろうな」


 自然にため息が出る。


「確かにそれぞれの退治物語なんていうのは、魔王討伐の華やかさからは比べものにならない小さな事なのかもしれないが」


 俺は一人歩き出す。兵士たちはそんな俺を黙って見ていた。


「ただ王国は俺を邪魔者扱いにするだけでは飽き足らず、命も狙ってくるし平穏な生活も邪魔してくる。これを止めるには、もう滅ぼすしかないだろ。だからお前たちに俺が生き残るか王国が生き残るかの戦いに加われとは言わない。好きにしたらいい」


 少女兵のヒマワリが俺に問いかける。


「だけどさ、あんた一人で勝てるの? 相手は国だよ、軍だってあるんだよ」

「地位も名誉も人それぞれ違う、戦闘力の差や権力の強さも様々だ。だが戦うからには対等、誰しも命は一つだからな。そこだけは生き物として皆平等だ」


 固唾を呑んで見守っている兵士たちに振り向いて笑顔を見せる。


「生きている限り俺の邪魔をするのなら死んでもらうまで。それで対等」


 俺の答えを聞いて他の兵士がつぶやく。


「すまない、俺はやっぱりついて行けない。でも、国に、いやあの王たちに奪われ続ける生活は嫌だ。俺は、俺はここから去る……」

「それも自由だ。選択した者が得られる未来だからな。他の者たちはどうする? 国に殉じて俺を止めようとするのも自由だぞ」


 俺は兵士たちに背を向け王都への道を進む。

 兵士たちはそれぞれの意見を戦わせてそれぞれが決断するといい。敵感知センスエネミーが少しだけ発動しているのは、殺意というより不満といったところか。


「俺の邪魔をする奴の末路は、判っていると思うがな」


 敵感知センスエネミーで発生する痛みが一気に消える。


「あたしは、ゼン……ううん、ゼロさんに付いていく!」


 ヒマワリが俺の後を付いてくる。

 そしてスキルの痛みの代わりに俺の後に続く多くの足音が聞こえてきた。

【後書きコーナー】

 ※2019/2/10 ヒロイン欠乏症につき、サブヒロイン「少女兵ヒマワリ」を投入しました。

 前後の話として、第64話「撤退戦と各地の動向」から改稿しています。

 あれ、こいつ誰だ? って思われた方、登場人物が追加されたと思って読み進めていただくか、一旦戻ってご確認いただけたら嬉しいです。

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