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暗闇での探索

 入り口の壁を離れて真っ暗闇の中を進む。見える範囲としては閃光の浮遊球(フローティングライト)で照らされている部分だけだが、床は見えているものの周りは何も見えない。


「それだけ壁から遠く離れているという事なのだろうが……」


 俺たちはふわふわする床を丁寧に進んでいく。

 俺の力があまり出せない状態で、床に抵抗がないのは助かるが。


「ゼロ、歩くの大変そうだけど、大丈夫?」

「なんとかな。エナジードレインを食らったといっても動けなくなった訳ではないからな」


 いろいろと試してみて判ったが、端的に言うとすごい力が出せなくなった状態だ。

 だから、力をかけずにできる事は問題無い。ただ疲れやすいというのはあるかな。ちょっと歩いただけで結構息が切れる。


「ちょっと止まってくれる?」


 ルシルはなにか思いついた様子で俺の背中に手を置いた。


「ここって少し浮いている感じがするでしょう」

「そうだな、少し跳び上がるだけでかなりの高さへ行けたりするし、精霊界というのは俺たちの世界とは重さの感覚が違うのかもしれないな」

「だよね。じゃあさ……」


 ルシルは俺の事を少しだけ押す。


「お、おお、おお!」


 俺はルシルに押されただけ前に進む。


「おわったったった!」


 感覚の調整ができなかったのか、足下が滑って尻餅をついてしまった。


「たたた……」

「ごめん、大丈夫?」

「あ、ああ。少し浮いている感じだったから派手に転んだわりには床に打ちつけなかったからな、平気だよ」


 そうは言ったものの、尾てい骨の辺りが少しズキズキする。


「でもさ、これだったら行けそう?」

「俺を押すって事か?」

「うんうん」


 立ち上がった俺の背中にルシルがまた手を添えた。


「初めはゆっくりね」

「え、俺はいいって言って……おわっ!」


 俺の足が浮いた所を見て、ルシルが押す。


「うん、いい感じいい感じ!」


 ルシルが調子のいい事を言って、ロイヤはキャッキャと喜んでいる。

 俺は倒れないように踏ん張るのが精一杯だ。


「これならどんどん進めるね!」

「いや、ちょっ、そんなに速く……ほわぁっ!」


 俺は足を滑らせて宙返りみたいに一回転する。


「ほぎゃっ!」

「あちゃ、ごめ~ん!」

「ゼロちゃん、大丈夫なん~?」


 こいつらー、絶対楽しんでいるだろう!


「でもこれだとバランスよく滑るには難しいかなあ」

「いや、そう無理しなくてもだな、俺だってちゃんと歩けるし」

「でも遅いか転んじゃうかだもんね」

「う、ぐぬぬ……」


 確かに調子が悪いというか、力が入らないから踏ん張りも利かなくて歩く速度が出ないのも確かだが。


「じゃあさ、私が右手を持つから、ロイヤちゃん左手持って」

「ん、判ったなん」


 ルシルが俺の右手を、ロイヤが俺の左手をつかむ。俺は二人に両手の自由を奪われた状態だ。


「これでゼロは膝を立てて座っていて」

「え、それってまさか!」


 俺の言葉はまったく聞かずにルシルはロイヤに声をかける。


「よ~っし、ロイヤちゃん行くよ~!」

「あい~!」


 二人は俺を引っ張って駆け出す。俺は両手をつかまれているからそのまま引きずられていく。


「お、これだとソリみたいに……」

「でしょ~?」

「滑って行け……どわっ!」


 俺はバランスを崩してうつ伏せになるが、両手はつかまれたままだからうつ伏せになって万歳をした状態で二人に引っ張られる。


「うわっぷ、まっ、ちょっ!」

「きゃははは! 速~い!」

「楽しいなん~!」


 閃光の浮遊球(フローティングライト)の明かりだけを頼りに、俺は二人に引きずられて進んでいく。

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