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迷惑かけられ通しのお礼に

 大柄な男はそのままひっくり返ってピクリとも動かない。


「やれやれ、これではまるで俺が弱い者いじめをしているみたいじゃないか。理不尽な解雇クビに戦利品の没収、俺の方が権力という魔物にいじめられたというのに」

「何をっ、王国に楯突く事が許されると思っているのか、ゼロ!」


 ソウッテはヒステリックに俺を非難する。


「もういい加減、お前の顔は見飽きたよ」


 俺は聖剣グラディエイトを振り下ろす。

 だが、ソウッテの腕に装着されている装備が俺の攻撃を弾く。


火蜥蜴の毒爪(サラマンドラニードル)か。呪われた装備とはいえ流石Sランクの武器だ。俺の攻撃に耐えられるとはな」

「ほほう、お前から巻き上げた装備だからな、いわくありげな爪だとは思っていたが、火蜥蜴の毒爪(サラマンドラニードル)と言うのか。噂には聞いた事があるぞぅ」


 呪われたままの状態だ。必要以上に重たく感じられるはずだし精神汚染や肉体疲労もかなりのもの。それを形の上でも使いこなせているというのは、ソウッテの実力は相当なのかも知れない。


「だからといって、俺の剣が効かないという訳ではないがな」


 俺は聖剣グラディエイトを鞘に納める。それと同時にソウッテの背中に切れ目が入った。そこからじわじわと背中から切り開かれていく。


「わっ、ほわっ、たったっ……びゃっ!」


 ソウッテの身体が切り裂かれて左右に分かれる。内容物を浴びた馬がいなないて走り去っていった。


「もう前ほど手加減はしない。権力を笠に着て今まで好き放題やってきたのだ。やられる方がただ殴られるだけとは思うなよ」


 既にソウッテは答える事ができない。だが、俺はそう言わずにはいられなかった。


「それで、お前たちはどうする? 俺は一人でも王都へ行く。理由は簡単だ、王国の中枢を破壊しない限り俺の安寧は訪れない。酷い仕打ちを受けた後で、それでも俺は王国から離れて暮らそうとした。問題を起こしたくはなかった。そっとしておいて欲しかった」


 俺は黙って聴いている兵士たちを見回した。俺が引き連れてきた兵士たちも、ソウッテの部隊にいた兵士たちも、皆真剣なまなざしを俺に向けている。


「王国はことごとく俺の平穏を乱そうとする。国外にいたとしてもそうだ。お前たちの中にはそれに加担した奴もいる事は知っているが、お前たちを責めるつもりはない。自らの意思で嬉々として俺の生活を邪魔したというのであれば話は変わってくるが、王国の命令で仕方がなく行ったのだと思う事にした」


 俺は手を腰に当てて兵士たちをにらむ。


「俺の強さを知ってなお、俺に手出しをしてくる事はないと思っているからだ。好き好んで俺と敵対しようと思う奴は名乗り出ろ。そこの真っ二つになった男と同じ目に遭わせてやる」


 沈黙。

 ただ風の音だけが辺りを包む。


「勇者ゼロ、あたしはあんたに付いていきたい。だけど弟が心配なんだ……」


 ヒマワリがそばかす顔を心配そうにして話しかけてきた。


「何を不安に思う?」

「あたしは強くない。こうして兵隊をやっているからなんとか食べていける。国がなくなれば弟の暮らしはどうなるのか……。今まではそれでもなんとか生きてきた。守られてきた。国があったから別の国から攻められたりしても追い払えたんだよ」

「だが魔族に攻撃されていたよな。ムサボール王国も、その周辺の国々も」

「うん、ここ最近はそうだったと隣の家の爺様も言っていた。魔物の出現で戦争どころじゃなくなったって」


 魔族が出没したのは十二年前。人間の国に攻めてきたのは十年程前のことだった。


「魔族……。確かあれは……」

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