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力場の中和

 暗い空間。空中に飛び出す。


「Sランクスキル発動、閃光の浮遊球(フローティングライト)! 発射三連!」


 光りというものは面白い。反射する物がなければ暗闇の中に浮かぶ光球でしかない。だから光源から反射した物は暗い中に浮かび上がる。


「初めに放っていた閃光の浮遊球(フローティングライト)だけでは視野が狭いんでな、お前の周りに浮かぶよう配置したぞ、ランカ!」

「まぶし……」


 ランカは目の前で発生した強い光に目を奪われる。

 きっと目がチカチカして辺りの様子が見えなくなっているだろう。


「食らえッ! SSランクスキル発動、豪炎の爆撃(グレーターボム)! 爆発で敵を吹き飛ばせっ!」

「たとえ視界が一時的に塞がれようとも、爆発ごときで我は破壊できんぞ!」


 俺の放った火球がランカに直撃するが、爆発してもランカの周りを囲う障壁で中には届いていない。

 だが爆風と爆発音でランカの感覚を奪う。

 俺は右手で小さい爆発を起こし、飛んでいる方向を変える。


「くそっ、どこだっ!」


 ランカは剣を振り回すが間合いを取っている俺には届かない。

 俺は直線的に突っ込むのではなく、ランカを中心にして時計回りでぐるっと迂回する。


「爆発の熱量は減ってきた……? 視界も戻ってきて、お、いない!? どこだっ!」

「ここだ」


 俺はランカの背後を取った。


「だが人間では我の障壁を越える事はできんぞ!」

「試してみるさ」


 後ろを振り向いたランカの胸に、手にした銀枝の杖を突き刺す。


「ひぎっ!」


 狙い違わず杖の先端がランカに刺さった。開いたままになっている胸の傷にそのまま。


「ひときわ……輝くその光……」


 ランカの障壁を素通りして銀枝の杖はランカに突き刺さっているんだ。強力な力場をものともしない、そこに壁などないかのようにすんなりと通す事ができた。


「精霊界の物質か! その宝玉が精霊界の力と共鳴しているっ!!」


 ランカは自分の胸に刺さった杖を見る。そこに光っている宝玉がチカチカと明滅を繰り返す。


「だ、だがっ、我の障壁を突き抜けただけ……そのはずなのにっ! なぜこんなに、ぐっ……痛い! ぐあぁぁあぁぁ!」


 ランカが急にうめきだし、銀枝の杖につかみかかる。


「なっ、なん……!」


 銀枝の杖をつかんだランカの手が、黒く変色して指の先から崩れ落ちていく。


「まさか、これは聖なる金属……!」

「リザクールというマント男、そいつが銀を恐れていた。別の金属へ変える事ができるコボルトたちをこき使ってな!」

「ぎ……銀……!」


 ランカの胸も徐々に黒ずんでいき、ぽっかりと穴が空いた。


「リッチーが傷みを感じるなど! ありえん! ありえんぞ!!」

「聖なる金属か。高位のアンデッドには辛いのかもしれないな。喰らう者(イーター)のユキネくらいであれば手にしても大丈夫だったようだが、更に冥界へ近い存在であれば聖なる力の影響も強いんだろう」

「ぐ……ぐくく……」


 冥界の伯爵はこの銀枝の杖を気にしていたっけ。排除しようとしていたという事は、影響も理解していたのだろう。

 ランカはそこまで認識が及ばなかったのはまだ高位アンデッドで過ごした時間が短いための経験不足だったのか。


「ともかく、これでお前も終わりだな、ランカ」

「ぐふっ……我が……我が……」


 ランカは力なくうなだれる。

 胸をうがった杖は、大きく広がった穴からすり抜けた所を俺が捕まえた。落っことすのも悪いからな。


「そうか、我はここで消滅するか……」


 指の欠け始めた手で胸の穴を探る。

 大きなため息を一つついて天を仰ぐ。


「無念だが、これも結末の形だな……」


 ランカは苦しそうに言葉を吐き出していた。

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