ご対面から攻め合って
こぶしが目の前に迫る。剣の先が床に触れた。力を込めて剣を突き出す。
「Sランクスキル発動、剣甲突! 突き出せ剣の力っ!!」
スキルの力で床を突く。その反動で俺の身体が上に飛ぶ。
「ゼロちゃんが跳んでいる向きを空中で変えたなん!?」
ロイヤの驚く声が背中に届く。
俺の身体は巨人のこぶしがからぶった上に浮かんでいる。
「ほう、儂の顔を見るか小さき者よ」
「恥ずかしがり屋な巨人が部屋を暗くした所で、その悪質さは気配で判るからなあ。今更顔を見たからどうという事もないだろう」
「ぬははは、いつ見てもおかしな言を垂れる口よのう!」
「まあそれも今日限りだろうがな」
「ほざくがいい」
俺は宙に浮いたまま体制を整え、目の前にある巨人の顔を斬りつけた。
「お前のお陰で目覚めた超覚醒剣グラディエイトだ。今度は膝だけでは済まないぞ!」
剣が巨人の顔に何度も叩き付けられる。
「ぶはぁっ、痛い! 痛いぞこんちくしょう!」
「どうしたさっきまでの偉そうな物言いは!」
「まさかその剣がここまで威力を増していようとは……。儂の膝を叩き割った時とは……やはりあの小娘が!」
巨人が急に動きを変える。またも俺を無視するような動きで動くものだから、その通り道に浮いていた俺は勢いに吹き飛ばされてしまう。
「く、空中は制御が……って、まさかお前っ!」
「もうガキに付き合っている暇はない! 小娘ぇ、その杖をよこせぇ!!」
巨人の狙いはやはりルシルの持つ銀枝の杖だ。あの杖が冥界の伯爵にとってとても危険な物であると宣言した。
「させるかよっ! Sランクスキル発動、風炎陣の舞! 噴き出せ炎の渦よっ!」
「儂に炎は通じんぞ! 飲み込んでくれよう!」
「別にお前に向けて放つ訳ではないっ!」
俺は手を後ろに向けて炎を噴き出させる。その勢いで空中を漂っていた俺の身体が狙った方向へとばく進できるのだ。
「なっ、炎の勢いで自分を押し出しだだとっ!」
「勢いが付いてしまえばこっちのものだ! 食らえっ、超覚醒剣グラディエイトの刃をっ!」
魔力を突っ込んだ剣が激しく光を放つ。辺りの暗さをはねのけるかのような眩しさだ。
「黙れガキがっ! 儂の放つ深遠の炎でその身を焼滅させてやるわいっ!」
冥界の伯爵が手のひらを開くと、そこから豪炎が俺に向かって噴き出してくる。
「ぐおっ、この圧力、火力……この間の炎よりも更に激しく強いものだな……」
だがそれでも俺は炎の中を突き進む。
「な、なぜ儂の豪炎を……その身一つで耐えるだけでなく、革鎧程度も焼滅できんとは!」
「流石と言わざるを得ないな。これが火蜥蜴の革鎧、レッドドラゴンの革を使った鎧の効果か!」
「炎が……ガキの身体を避けて通る……儂の炎の手がガキに届いておらぬ……触れることすらかなわぬとは!」
一瞬だが驚いた事で動きが止まる。
だが俺たちにはその一瞬で十分だった。
「ルシル!」
「任せて!」
ルシルが銀枝の杖に魔力を注入する。例の宝玉が更に強い光を放ち、俺の剣と呼応するかのように辺りが明るくなった。
「剣が……」
「杖が……」
互いが互いを求めるかのように引き合っていく。
そしてその間にいるのは、巨大な冥界の伯爵。
「ぬぐわぁっ!!!」
俺が剣を振り下ろし、巨人の身体を真ん中から叩き割る。
光の筋が、大きな身体に地割れのような形で広がっていった。
【後書きコーナー】
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