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俺を狙えと標的変更

 俺よりもルシルを見ている、そんな気配を感じた。


「それは精霊の魂を宿す銀枝の杖ではないか。そのような物を小さき者が所持しておろうとはな。これは以外を通り越して奇跡とでも言おうかのう、ぶふふふ……」


 声だけ聴けば笑っているようにも思えるが、光る目は笑っていない。


「いいだろう、その杖ごと迷いを断ち切ってくれようぞ!」


 巨人がまた足を踏みならす。俺たちを狙って一撃、また一撃と足を踏みつけ、その度に床が揺れる。


「だがそんな攻撃にやすやすとやられる俺たちではないからな!」

「儂は別に男の小さき者には興味がない。痛いからのう。だがそこな女の小さき者は、いや、その銀枝の杖には非常に興味をそそられるわい」


 何度となく俺たちを踏みつけようと振り下ろされる足。巨人の足が俺たちを捕らえきれない状態で何度も床を踏みしめるその姿は、地団駄を踏んでいる子供のようにも見える。

 大きさには天と地ほどの違いがあるがな。


「ロイヤ、ルシルはこのふわふわした部屋で足が取られるかもしれない。後ろに下がって、ルシルを支えてやってくれ」

「判ったなん!」


 おれはルシルとロイヤを後退させる。できれば部屋から出てしまった方がいいのだろうが、逃げ回っている内に洞窟の通路とは反対の方向へと移動してしまっていた。


「いや、移動させられてしまったと言うべきか。だがっ!」


 俺は構えた剣を握り直し、床を蹴り上げて泳ぐように進む。


「慣れれば滑るように進めるからな、これはこれで速度が出ていいぞ」

「ほう、小さき者が儂の部屋にいると足下がおぼつかなくなるが、そこの小さき者はこれを自由に使いこなせているとは。ふむぅ、面白い! 面白いぞぉ!」

「それはどうも」


 俺は振り下ろされた足に狙いを定め、超覚醒剣グラディエイトで斬りつける。

 固い岩盤を叩いているような強い衝撃が手に伝わってくるが、そんな岩のような巨人の足も少しは傷が付いたようだ。


「やはりその剣が厄介だが、それよりもその奥の小さき者が持っている物の方が、なあ」


 この状態でも巨人はルシルの持つ銀枝の杖が気になる様子だった。


「って事は、俺は眼中にないって話だな!」

「そうは言っておらんぞ、確かに男の小さき者には興味がないがな、こうして話はしてやっているだろう。感謝してくれてもよいのだぞ」

「するかよっ! SSランクスキル発動、旋回横連斬サイドターンスラッシュ! このぶっとい足を斬り刻めっ!」


 俺の剣は何度も巨人の足を斬りつける。その度に厚い皮膚が割け、中から体液がほとばしっていく。


「いい加減邪魔をするでない」


 上から手が降ってくる。巨大なこぶしが俺を狙っているのだ。


「それくらい避けられないとでも」


 俺が前にステップを踏んでこぶしをかわそうとした時に逆の手が伸びてきた。

 俺の移動しようとした先を読んだ攻撃。このままだと直撃を食らって奴の思い通りになってしまう。


「少し浮いている、が巨人は足を床に付けられる。この浮力は絶対のものではないという事……」


 敵のこぶしは俺の身長以上ある大きさだ。そのこぶしが迫ってくる状況で俺は剣を逆手に構え直す。

 床に向けて振り下ろすと、確かに固い床を感じられた。


「一瞬でも床を使えれば!」


 迫り来るこぶしを前に、俺の筋肉は引き締めて縮まろうとする。跳びはねる力を蓄えるために。

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