上り調子に山
俺はオークどもを斬り倒しながら次々と部屋を攻略していく。
洞窟の中は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれていった。
「ぶふぅ、なんだお前ら、ここがランカ様の治めるオーク族、ブフウの洞窟と知っての襲撃か!?」
一回り大きなオークがこれまた大きな棍棒を持って迫ってくる。
「知っている」
俺は超覚醒剣グラディエイトを一閃すると大オークの頭が吹き飛んだ。
「ねえゼロ、なにもオークを滅ぼすまでやらなくてもいいんじゃない?」
「ルシルにしては弱腰だな。俺だって初めは放っておけるのならそうしたかったがな、ああもちょっかいを出してくるとなるとやはり諸悪の根源をそれこそ根絶やしにしないとな」
「でもさ、オークはどうせヴァンパイアに使役されているだけでしょう。頭だけ潰せば大人しくなるんじゃないかなあ。なにも私たちの屋敷まであの長大な距離を遠征する事もないだろうし」
「なるほど。そうか」
「なに?」
「ルシル、お前面倒になったんだろう。オークが多すぎて」
「うっ」
図星か。
確かにオークは多い。それにそこかしこに死の罠が転がっている。初めに見つけた罠は被害者がいなかったが、今いくつか越えた罠には何匹かオークが引っかかってその骸をさらしていたからな。
「大罪の清算をかけたって、罠は作れるからね」
「確かにそれはそうか。それも俺たちに対する殺意っていうわけでもないからな、それで心臓が破裂することもないという事か」
「そうなのよ。だから面倒だなって……」
「やっぱり」
「あ」
長い通路に多くのオーク。そして結構きわどい罠、罠、罠。
近場にいるオークを捕まえてランカの居場所を聞き出すが、結局それも通路の先へ進むだけだ。
「この通路、なんだか上りになってきていない?」
「そうだなあ。それに曲がりくねっているけれど、螺旋を描いているようにも思えるな」
「私たち上っているって事? 結構な高さ分は上っている気がするんだけど」
「ルシルの言う通りだな。でも待てよ……」
確かに結構上っている。そう、上っているんだ。
「この高さ……俺たちが下ったり落ちたりした分よりも上がってないか?」
「あ、やっぱりゼロもそう思う? ロイヤちゃんは?」
「ロイヤも……いっぱい上っているように思えるなん……」
「そうだよな。俺たちの入ってきた地上よりも高い場所を進んでいるんじゃないか!?」
俺は自分の言葉ですら不自然に思える。だって、だ。
「でもさゼロ、あの草原にはこんな高さの物なんてなかったよ。少しこんもりしていた入り口があっただけでさ」
「ああ。高さ的には丘というよりもう山と言ってもいいくらい上っているだろう。高い物がなにもなかったあの場所で、だ」
上り坂の通路を進み、いくつかのカーブを曲がっていくと、大きな両開きの扉が通路をふさいでいた。
「今までの部屋に付いていた扉とは違うな。大きさもそうだが、装飾が華美で手が込んでいる」
「そうね、木の板で間仕切りにしていたのとは大違いね」
「この先は洞窟とは違うのだろうな」
「開けてみるね」
ルシルが扉の取っ手に触れようとするので、俺はそれを止めた。
「待ってくれ。扉にも罠が仕掛けられているかもしれない。周りを見てもこの埃の積もり具合だと、この扉は長い間使われていないようにも思えるからな」
「そっか……ノブに毒針とか定番だもんね」
「ああ」
「じゃあどう開けるの?」
「そうだな……Sランクスキル発動、剣撃波! 扉ごと斬り割けっ!!」
俺の一振りで生み出された真空波が扉を木っ端微塵に吹き飛ばした。