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銀枝の杖

 俺の話を聴いてユキネがうなずく。その度に大きな胸が揺れるのが気になると言えば気になるが、あえてそれには触れない事にした。


「それだったらそこのコボルトちゃんには難しいかもしれないけど、ルシルちゃんになら大丈夫そうね」

「ルシルに?」

「ええ。そのコボルトちゃんの事だと使うというか持つ事も難しいと思うけど、これ」


 ユキネが空中に幻影を映し出す。


「これは?」

「銀枝の杖と言って、魔を払う銀の力を持った魔力増幅の杖よ。ゼロくんに使ってもらってもいいんだけど、ゼロくんはその剣があるでしょ?」

「ああ。それにロイヤだと銀は手にできない、か」

「そう言う事」


 ユキネの言う通り、ロイヤでは銀を手にした瞬間にコバルトへ変質させてしまう。ルシルであれば杖を使っても問題無いだろう。

 魔力が上がるならありがたいものだしな。


「で、これはどこにあるんだユキネ」

「ここに見えるでしょう?」

「え、これは幻影だろう? 見せているだけじゃないのか」

「だと思うでしょう。ちょっとルシルちゃん」


 ユキネはルシルを呼んで、空中に浮いている映像に手を伸ばさせる。


「そのまま、これをつかむつもりで……そう、握ってみて。ゆっくり、優しくね」

「う、うん……」


 ルシルはユキネに言われるがまま、素直に幻影へ手を伸ばす。


「あ……」


 幻影をルシルが握る振りをして、目を閉じる。


「行くよっルシルちゃん!」


 ユキネがなにか手を払って呪文のような言葉を唱えると、一瞬杖が光った。


「あ!」


 ルシルは目を見開く。その先には銀でできた杖が握られている。杖は枝のように上方が枝分かれしていて、その枝の先には宝石のたまが光り輝いていた。


「これ、凄い力を感じる……」


 ルシルは珠の光りを見つめている。ルシルが注視するとその珠が光り始める。


「もしかしてこれ、魔力の種類によって増幅する宝珠が違うのね」

「そう判った? 火、水、雷撃、他にも宝珠の種類はたくさんあるし、重ね合わせで効果も変わったりするから操者の使い方次第でいろいろと試せると思うの。やり方によっては減衰する効果も出たりすると思うけどね」

「そうなんだ。重ね合わせは慎重にしないとね」


 ルシルは光る銀の杖をしげしげと眺めていた。


「なあユキネ、これはいったいどうしたんだ? 急に物質化するのも凄いけど……」

「これはね、昔……って言っても四十年くらい前かな、精霊界の研究をしていた人がいてね、その時に精霊界とつなげた門を通って精霊界にある物をいろいろと持ち帰ったのよ。その時の道具の一つよ」

「そんな大事な物を使っていいのか?」

「いいわ、私とゼロくんの間だもの、研究者としてこれくらいは手伝わせて。それに私たちでは精霊界の道具は使えないけれど、ルシルちゃんならその膨大な魔力を有効に使うために精霊界の道具も使いこなしてくれるかなって思って」

「助かるよユキネ」

「お礼は身体で返してくれたら嬉しいな」


 身体をしならせて俺の顔をのぞき込むユキネ。


「俺を研究材料にしようっていう事か?」

「あ、判った~?」


 コロコロとユキネが笑って離れた。


「それで、そのヴァンパイアと精霊界にいる冥界の伯爵とやらはどうするのゼロくん」

「どうするって言ってもなあ……」


 ランカはどこかに消えてしまったし、冥界の伯爵はランカが召喚しないと出てこない。そうなると当然ランカを探す事になるのだが、ランカが俺たちに殺意を抱く事はないとなると、敵感知センスエネミーも効果が無いからな。

 さて、どうしたものかな。


「それならきっと……あそこかもしれないなん」


 ロイヤが俺の腕を引っ張る。思い当たる場所があるのか、おずおずとした反応ながらも、少し自信を持っている様子だった。

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